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<商業捕鯨の針路>石巻・鮎川から(4)不安の船出/再開の成否 見通せず

最後の調査捕鯨で水揚げされ、調査されるクジラ=1日、北海道網走市

■ 路線を大転換
 「捕鯨産業の発展という目的が顧みられず、鯨類に対する異なる意見や立場が共存する可能性すらない」(2018年12月26日、内閣官房長官談話)
 国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退は、戦後の日本が歩んだ国際協調路線の大転換だった。
 IWCの加盟国は89カ国(18年10月時点)。捕鯨推進41、反捕鯨が48と拮抗し、重要事項の決定ができない状態が続く。クジラを保護の対象と見なす反捕鯨国と、利用可能な資源と見る捕鯨国。結論の出ない「神学論争」はIWCを機能不全に陥らせた。
 水産庁は今月公表の捕鯨を巡る報告書で「クジラ保護の理論を拡大されれば、マグロなど他の水産資源にも同様の危機の恐れがある」と警戒感をあらわにし、脱退の正当性を主張した。

■ 日本不利に?
 「こういう形で脱退した日本が、他国と協議して資源管理をしたいと言っても相手にされるだろうか」
 石巻魚市場(石巻市)の須能邦雄相談役は商業捕鯨再開を評価しつつ、日本の水産業の将来を案じる。
 世界有数の水産資源の宝庫、三陸沖。日本の排他的経済水域(EEZ)付近の公海には、外国の漁船が熱い視線を送る。
 回遊する魚を持続的に利用するには、公海で操業する外国との調整が必要になる。国際協調を軽視したとの批判を浴びる日本は不利な立場にならないか−。主力魚種の減少に悩む水産業者の不安は拭えない。
 「これから始まる商業捕鯨は国際法違反に当たる。日本が掲げてきた多国間主義は建前だったのか」。東北大東北アジア研究センターの石井敦准教授(国際政治)は一連の日本政府の対応を非難する。
 国連海洋法条約65条は鯨類の保全や管理などについて「適当な国際機関を通じて活動する」と定める。日本政府は「第2のIWC」設立を視野に、当面はIWCへのオブザーバー参加で規定を満たす構えだが、石井准教授は「条文を拡大解釈している」と指摘した。

■ 国際理解訴え
 反捕鯨国の反発。新たな国際機関の設立。産業としての採算性。不透明な要素を幾つも抱え、商業捕鯨は1日、船出する。
 「捕鯨産業を伝えていくにはクジラを絶やしてはいけない。あるものを取り尽くしてしまっては元も子もない」
 同日、北海道釧路市から小型捕鯨船を出港させる鮎川捕鯨(石巻市)の菊田憲男執行役員はクジラとの共存を誓う。
 石巻魚市場の須能相談役は「石巻はクジラと結び付きが強い。鯨肉を最も良い値で扱う市場でありたい」と語る一方、「捕鯨産業を存続させるには国際社会の理解が必要だ」と念を押した。

[国際捕鯨委員会(IWC)]1948年、鯨類の資源管理機関として発足。日本は51年に加盟した。82年に商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)を採択。包括的な資源評価を経て90年までに新たな捕獲枠を設けるとしたが、捕獲枠の提案は否決や取り下げが続いた。昨年の総会でモラトリアム維持の重要性を掲げた宣言が採択された。


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2019年06月30日日曜日


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