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<大農協元年>合併「新みやぎ」発足(下)生活インフラ/進む過疎化 膨らむ役割

金融・共済窓口と購買部門を備えたいわでやま農協の移動店舗車。過疎地の高齢者の生活を支えている=宮城県大崎市鳴子温泉

 宮城県北5農協が合併し、1日に発足する新みやぎ農協(宮城県栗原市)は「力強い農業」と並んで「豊かな地域づくり」に力点を置く。農村は超高齢社会に突入し、交通弱者や買い物難民の対策など難題に直面する。組合員の農家は減っても、暮らしを支えるインフラを担う農協の役割は相対的に増している。

<移動店舗で支援>
 6月21日朝、大崎市鳴子温泉の川渡地区公民館前に、いわでやま農協(大崎市)の3トントラックが止まった。食品、日用雑貨など200種以上を扱う購買部門、貯金の入出金や公共料金の支払いができる金融窓口を備えた移動店舗車だ。
 「新鮮な野菜が安く買えるので助かる」と話すのは1人暮らしの女性(82)。3年ほど前、近くのスーパーが閉店した。車の免許を持たず、バスの本数は少ないため、買い物に苦労していたという。
 運行開始は2017年1月。農協の購買店付きの移動金融店舗は東北で初の試みだった。運転手兼購買担当1人と金融担当2人が乗り込む。平日の午前と午後に1カ所ずつ、過疎化が特に進んだ地域を巡る。
 導入に合わせ、鳴子店の金融窓口と鬼首、真山両店を閉鎖した。移動店舗車の1カ所当たりの利用者は10〜20人にすぎない。鈴木千世秀組合長は「単体で採算は取れないが、店舗・業務を見直し、差し引き年約1000万円の経費節減につながった」と強調する。
 移動店舗車に熱い視線を送るのは栗っこ農協(栗原市)。ある中山間地の支店は1日の来店者が10人に満たず、赤字が続いている。
 近くの集落は40年前、13戸が米作りをしていたが、今はわずか2戸に減った。農業男性(60)は「車を運転できない高齢者は地域外の支店まで1人で行けない」と訴え、支店機能の維持を求める。
 同農協は支店の金融窓口を週1回の移動店舗で代替し、支店施設は日用品販売に特化する構想を描く。大内一也専務は「他農協のノウハウを共有できるのも合併のメリット」と話す。

<水平展開が鍵に>
 逆に、いわでやま農協は、栗っこ農協の子会社が行う葬祭事業に期待する。昨年12月、管内の提携業者が廃業したため、多くの組合員から再開を求める声が寄せられているという。
 生活インフラ機能の維持は全国農業協同組合中央会(全中)の自己改革の柱でもある。各農協の取り組みをいかに水平展開できるかが、組合員の合併に対する不安を取り除く鍵になる。
 農協改革に詳しい日本総合研究所の三輪泰史エクスパートは「広域合併によって経営力が高まり、効率的な事業展開が期待できる。一方、将来にわたって機能を維持するには、市町村が費用負担や優遇策を講じ、農協と協働する仕組みが必要になる」と指摘する。


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2019年07月01日月曜日


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