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<商業捕鯨>31年ぶり再開 釧路港に2頭水揚げ

 日本は1日、領海と排他的経済水域(EEZ)を操業海域として31年ぶりに商業捕鯨を再開した。北海道の釧路港からは沿岸操業の捕鯨船、山口県下関港では沖合操業の捕鯨船がそれぞれ出航。初日は釧路港で2頭が水揚げされた。宮城県石巻市鮎川などの捕鯨基地は悲願の実現を歓迎するが、31年の間に食生活が変化し採算性は不透明だ。商業捕鯨を禁じた国際捕鯨委員会(IWC)を6月30日に脱退したことで反捕鯨国からの批判が強まる恐れもある。

 商業捕鯨は乱獲を防ぐためIWCで採択された方式で算出した捕獲枠内で実施する。ツチクジラなどIWC管理対象外種を捕獲していた沿岸操業は、新たにミンククジラが対象に加わる。沖合操業はミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラの3種が対象。
 水産庁は1日、12月末までの商業捕鯨の捕獲枠を計227頭に設定したと発表した。内訳はミンククジラ52頭、ニタリクジラ150頭、イワシクジラ25頭。商業捕鯨による鯨肉の年間供給量は南極海での捕獲がなくなるのが響き、調査捕鯨より減少する見通し。
 釧路港からは沿岸操業を手掛ける鮎川捕鯨(石巻市)など6業者5隻の小型捕鯨船、下関港からは沖合操業を担う共同船舶(東京)の捕鯨母船「日新丸」を含む3隻の船団がそれぞれ出航した。日本小型捕鯨協会の貝良文会長(和歌山県太地町漁協参事)は釧路港で取材に応じ「31年間再開を願っていた。こんなにうれしいことはない」と述べた。
 吉川貴盛農相は下関港の出航式に出席し「決められた数量を守りながらしっかりとクジラを捕り、捕鯨産業の復興を目指してほしい」とあいさつした。
 水産庁は当面、沿岸操業基地として石巻市鮎川、青森県八戸市、北海道の網走市と釧路市、千葉県南房総市、和歌山県太地町、沖合操業基地に下関市を想定している。
 クジラの資源管理を担うIWCは1982年に商業捕鯨の一時停止を決定。日本は再開を求めたが認められず、昨年12月に脱退を通告した。日本は88年に商業捕鯨から撤退する一方、日本沿岸を含む北西太平洋と南極海で調査捕鯨を続けてきた。商業捕鯨再開に伴い、調査捕鯨は取りやめる。

◎新たな捕鯨像の構築必要

 【解説】31年ぶりに再開された商業捕鯨の針路には幾つもの困難が待ち構える。捕鯨業者は補助金含みの調査捕鯨の終了で体質改善と自立が迫られる一方、鯨肉消費の激減と厳しい捕鯨枠設定で事業採算性は見通せない。反捕鯨国の批判リスクも抱える中、産業や文化を含めた日本の新たな捕鯨像の構築が求められる。
 調査捕鯨を含む捕鯨関連予算として国は毎年50億円程度を計上してきた。商業捕鯨再開後も捕鯨業者の分布状況調査などへ補助金を支出するものの、段階的な縮小は免れない。
 商業捕鯨で期待されるのは生産性と商品価値の向上だ。個体の大小に関わらず捕獲する調査捕鯨と比べ、高密度海域で肥えたクジラを捕獲できる。
 ただ、採算の鍵を握る捕獲枠は極めて限定的だ。沿岸捕鯨に割り当てられたのはミンククジラの32頭。捕鯨関係者は「想定よりかなり少ない」と不安視する。
 商業捕鯨から撤退した31年間で、捕鯨を取り巻く環境は激変した。石巻市鮎川など捕鯨基地の繁栄を支えた鯨肥などの関連産業は衰退。鯨肉消費量はピーク時の1.3%しかない。国際司法裁判所への提訴など反捕鯨国の動向次第で、販路開拓は難航も予想される。
 商業捕鯨の成否は、捕鯨産業と地域の連携が鍵を握る。鯨食をはじめクジラにまつわる地域文化をどう国内外に発信するか。食生活の変容と国際情勢を踏まえた新たな商業捕鯨の在り方が問われている。
(石巻総局・関根梢)


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2019年07月02日火曜日


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