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<参院選東北>営みの中で/働き方改革 法変われど実態真っ黒

夜間の幹線道路を走るトラック。一部ドライバーは「働き方改革とは無縁だ」と訴える=仙台市若林区

 参院選(21日投開票)が公示された4日、東北各地で候補者の訴えが響いた。過重労働や児童虐待、経済対策−。山積する課題と向き合い、法律や制度で人々の営みを支える。政治本来の役割は重い。あえぎつつ、光を求める人々の声は今度こそ届くのか。

 「長い労働時間を何とかしてくれ」。かつての上司の言葉だった。仙台市のトラック運転手前田孝市さん(51)=仮名=は、反論を許さない口調が耳を離れない。

◎勤務記録改ざん

 業務内容は車内の運行記録計で管理され、データは勤務先に送られる。業務量が変わらない以上、労働時間は調整のしようがない。
 前田さんは荷物の積み込みの際、作業開始から約2時間たってから、記録計を「休憩」から「荷積み」に切り替えるようにした。実労働時間を短く装うためだ。過重な勤務が記録に残らないよう、言われるまま改ざん行為を続けた。
 今春までの2年半、首都圏に本社がある中小運送会社の仙台支店で働いた。主に物流大手の孫請けとして東京−仙台間の荷物を運んだ。
 出勤日には午後3時すぎに支店に出向き、近くの物流大手の営業所へ。最初の仕事はベルトコンベヤーで流れてくる1000個以上の荷物の積み込み。午後9時ごろに出発し、翌午前2時ごろに都内の営業所で荷を降ろす。
 これで業務終了のはずだが、現地で大手物流の社員に頼まれて追加配送するのが通例となっていた。再び荷物を積み、都内の営業所を巡った。
 食事などを済ませて休憩に入るのは午前10時前後。帰り荷を積み始める午後5時半まで車内で仮眠した。この間、7時間余。トラックドライバーの休息時間として国が定める改善基準「1日継続8時間以上」に満たなかった。

◎遠い別の国の話

 同じ勤務パターンを繰り返し、完全な休暇は月4日程度にとどまった。不規則な勤務と昼夜を問わない過重労働。「生活のために仕方がない」。割り切ってはいても、心身の疲れは隠せなかった。
 長女が通う小学校の運動会に妻と出掛けても、途中でふらふらになってしまう。「もう駄目だ」。子どもの活躍を見届けることなく、いつも先に帰宅した。
 会社と労働時間に関する契約を結んだ記憶がない。職場には労働組合もなかった。有給休暇を希望しても「手続きが面倒」「有給はあってないようなもんだから」と断られた。
 4月、時間外労働の罰則付き上限規定や年5日の年休取得の義務化などを盛り込んだ働き方改革関連法が施行された。対象は当面大企業に限られる上、トラック運転手などは2024年まで適用されず、過酷な労働環境は放置されたままだ。「遠い別の国の話だな」。国会での議論が空虚に響いた。
 賃金トラブルもあり、前田さんは6月に別の運送会社に再就職した。待遇に不満はないが、勤務時間のごまかしという業界慣行に変化は感じられない。
 法改正もあり、国は時短や休暇取得の旗を振る。「表面的に取り繕っても現場の裏側は真っ黒。政治家に実態をよく見ろと言いたい」。前田さんが冷ややかに言い放った。
(報道部・鈴木悠太)


関連ページ: 宮城 社会 19参院選

2019年07月05日金曜日


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