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<参院選東北>営みの中で/子育て・女性活躍 保育無償化 消えぬ懸念

子どもたちの楽しそうな声が響く保育所。10月からの幼児教育・保育の無償化で、保育士不足の深刻化が懸念される=仙台市

<人も時間も不足>
 働くママを支えるママの一日は目まぐるしい。
 「日中だけでは仕事が終わらない。どうしても家に持ち帰らざるを得ない」
 仙台市宮城野区の認可保育所で働く保育士佐藤愛さん(30)=仮名=は、自身も3歳と1歳の2人の子育てに奮闘する。2人を勤務先とは別の保育所に預け、午前8時すぎに出勤。午後5時半ごろ職場を引き揚げ、迎えに行くのが日課だ。
 運動会など行事が近づくと、ほとんどの同僚が残業する。心の中で「ごめん」と手を合わせ、職場を後にする。
 帰宅後、子どもたちに夕食を食べさせ、寝かしつけた後、保育士の顔に戻る。保護者向けのお便り作成、保育指導案の検討、日誌の記入…。勤務中はおんぶに抱っこ、おむつ替えと体を動かし通しで、デスクワークに着手する余裕はない。
 保育士になって8年目。0歳児学級を担当する保育士4人のリーダーだ。「本当は経験の浅い後輩に仕事のやり方を教えたり、話し合ったりしたい。でも現場では人も時間も足りない」
 5月に成立した改正子ども・子育て支援法により、10月から保育所、幼稚園、認定こども園が無償化される。
 「小中学校9年間の普通教育無償化以来、実に70年ぶりの大改革だ。子育てや教育の負担を大幅に軽減し、日本を子どもを産み育てやすい国へ大きく転換する」。安倍晋三首相は2月の衆院予算委員会で胸を張った。
 「保育所で預かる子どもは増えるだろうな。でも、保育士は頑張っても給料が安いから、結婚や子育てを機に辞めてしまう人が多い。もっと人手不足解消にお金を使ってほしい」。佐藤さんには、政府が唱える「女性活躍」が空疎なお題目に聞こえる。

<まず待遇改善を>
 宮城労働局によると、宮城県内の保育士の有効求人倍率は3月に4.04倍に達し、5年前の1.18倍から急上昇した。数字上は空前の「売り手市場」。だが保育士の待遇が向上した実感はない。採用側が人材確保に窮するばかりの状況が続く。
 政府は認可保育所に「落選」した家庭を救済するため、保育士の配置人数などを示した国の指導監督基準を満たさない認可外施設も5年間は無償化の対象とした。「大改革」の代償に保育士不足の窮状がなし崩しに追認され、未来を担う子どもの安全が置き去りにされかねない。
 保育の質の低下や事故への懸念は消えない。仙台市内の保育所の園長は言う。
 「保育士が足りなければ労働環境がますます悪化し、さらに人が集まらなくなる。まずは現場に保育士を取り戻すため、待遇改善に取り組むべきではないか」
(報道部・小木曽崇)


関連ページ: 宮城 社会 19参院選

2019年07月06日土曜日


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