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<ニュース深掘り>宮城県警の児童虐待摘発急増 親への支援見直し急務

 宮城県内で、児童虐待により保護者らが摘発される事件が急増している。警察官を出向させるなど、県警と県や仙台市の児童相談所(児相)との連携強化が功を奏した形だが、虐待が繰り返されたとみられる例もあり、問題の根本的な解決につながっているとは言い難い。児相の態勢を強化するとともに、行政や地域による子育て世帯の支援の在り方を見直す必要がある。
 宮城県警が2005年以降、児童虐待で摘発、相談対応した数の推移はグラフの通り。今年、被害児童の保護者らを摘発した事例は5月末現在で16件に上り、統計を取り始めた05年以降で2番目に多い。
 今月1日には登米市で小学生の娘(9)を蹴るなどしてけがをさせたとして父親(37)が傷害容疑で逮捕され、数はさらに増える。子どもが死亡した事案も複数あった=表=。
 県警は本年度から、県が管轄する3カ所全ての児相に現役の警察官を出向させ、相談対応に当たっている。仙台市児相では15年度から、元警察官が非常勤の嘱託職員として、緊急対応をサポートしている。
 摘発が増えた要因について、県警県民安全対策課は「被害相談があった際、児相の警察官が県警とのパイプ役となって情報共有を密にし、子どもを守るため最善の判断をしている結果だろう」と分析する。
 ただ、摘発により被害児童や家族が抱える問題が全て解決するわけではない。
 19年に県警が摘発した児童虐待事件の容疑は、暴行と傷害が約7割を占める。保護者が逮捕された場合は20日以内の勾留後、略式起訴で罰金刑を受け、釈放されるケースが大半だ。
 ある県警幹部は「釈放後も家族の縁は切れない。警察が動けるのは事件発覚時が主で、できることは限られる」と漏らす。
 児相が相談を受けながら、虐待の芽を摘めなかったケースもあった。
 泉区で今年5月、父親(29)が小学2年の長男(7)に暴行しけがをさせた傷害事件では、事件の2日前に「長男が暴行を受けている」と学校から仙台市児相に情報提供があった。
 連絡を受けた金曜夕、長男に目立った傷がなかったことなどから市児相は即座に一時保護せず、週明けに対応すると判断。日曜夜、長男は父親による暴行で脚などに2週間のけがを負い、近所の交番に助けを求めて駆け込んだ。
 市児相の一條明所長は「当時の情報では重大事態と言えず、恐らくどの児相でも同じ判断をする。指針に基づく適切な対応だった」と説明する。
 東京や千葉などで起きた児童虐待による死亡事件では、児相の対応次第で子どもの命を救えたとの指摘もある。県内の児相も対応方針の検証や職員の拡充を早急に進めることが求められる。
 離婚の増加や子育てを巡る地域のつながりの薄れも、児童虐待が増えた要因として挙げられる。
 東北大大学院教育学研究科の加藤道代教授(臨床心理学)は「今の親が抱えるイライラに応じ、行政や地域の支援体制を更新していかなければならない」と指摘する。子育て中の親を支える行政サービスなどの再構築も不可欠だろう。(報道部・鈴木悠太)

[児童虐待防止法と児童福祉法の改正]東京都や千葉県、北海道で「しつけ」と称し子どもを死亡させる児童虐待が相次いだことを踏まえ、親権者らによる体罰禁止を明文化。一時保護と相談業務に当たる職員を分けることで児相による家庭への介入を強化する。人口に応じた児童福祉司の増員や転居先の関係機関との速やかな情報共有など児相の態勢強化も図る。2020年4月施行予定。


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2019年07月08日月曜日


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