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<仙台いやすこ歩き>(103)ジェラート/旬を冷凍「果物」手軽に

 野に街に、黄色の花が目につく。夏来たり、とふと思い出したのが画伯との約束だ。「今度、夏にはここに来ようね」。そんな会話を交わしたのは、塩釜のおさんこ茶屋に行った帰り道のこと。2人とも約束不履行のまま夏は越せないよと、本塩釜駅から歩いて5分の「ジェラテリア フルーツラボラトリー」にやってきたのである。
 本町通りを歩いていくと目に飛び込んでくるレモンイエローのお店がそこ。ジリジリとした日差しの効果もあってか、どこか異国の店のよう。扉を開けると、涼しい空気とともに店主の渡辺敬久(よしひさ)さん(43)が迎えてくれた。花のように色とりどりに並ぶジェラートたちを横目に、お話を伺う。
 店はこの6月でちょうどオープン3年目だそう。渡辺さんは同じ通りにある渡辺果物店の2代目店主でもあるのだ。50年の歴史ある果物店は渡辺さんのお父さんが創業。そのお父さんは渡辺さんが学生の時に急逝され、以来20年以上果物店を営んでいる。
 「大変だったかもしれないが、家族経営だからやってこられたと思う」と渡辺さんは振り返る。
 丸ごとの果物を買うお客さんは年々減少。「手を掛けて食べなくなっていく中、果物の加工を考え、アイスクリームを作りたいと思ったんです」
 独学だった。本を見ながら試行錯誤を重ね、ジェラート店を開くための勉強もした。中小企業庁主催の全国創業スクール選手権ではベスト8に選ばれた。
 そんな話を聞いていると、お客さんがやって来る。まずは男性が「なんか新しいのない?」。「今日はスイカがありますよ」「じゃ、それ」
 次は家族連れで、食べた後に「四国の孫にも送るのよ。みんな楽しみにしてるの」とうれしそうに話す。女子高生グループ、観光客とひっきりなしだ。
 ひとしきりの人波が引いたところで、奥の工房に案内してもらった。なんともフレッシュな香り。「果物は手切り、手作業です。果物の旬は2〜3週間。出がけの最もいいものを買って冷凍しておきます」
 その渡辺さんの一日は朝4時に起きて仙台市中央卸売市場で果物を仕入れることに始まる。市場から帰って果物店の配達、そしてジェラートの店を開ける準備へ。果物店に生まれ育ち、培ってきた確かな土台があってこそ、人気ジェラートが生まれるんだとつくづく思わされる。
 種類は20種近い。注文されたものを練って練ってカップやコーンに盛り付けしていくのだが、その作業は本当に一つ一つが丁寧だ。密度の高い少し固めのジェラートは、練ることで滑らかになるのだそう。そんなジェラートを手にした人はみんな幸せな顔になり、仲良くシェアする。
 われわれ2人が選んだのは藻塩ミルクとスイカ、グレープフルーツとジャンドーヤ(チョコレートとヘーゼルナッツ)で、もちろんダブル。口に入れるとひんやり爽やか。干上がった体の隅々まで慰めてくれるよう。目までとろけそうになりながら2人はぽつり。「トリプルがあったらいいのに」「うん、スーパートリプルでもいける〜」

「健康食品」から嗜好品へ

 ジェラートとはイタリア語で「凍った」という意味を持つ氷菓。歴史については諸説あり、最も古い記録は旧約聖書に出てくる。また、ローマの英雄ジュリアス・シーザーがアペニン山脈から氷を運ばせて、乳や蜜、ワインなどと混ぜて飲んだとも伝えられる。
 古代の氷菓はお菓子としてではなく疲れた体を元気にする「健康食品」として利用され、歴史が進むと王侯貴族たちの嗜好(しこう)品となり、さらにイタリアからヨーロッパ、米国と世界に広がっていった。
 ジェラートの原料は果汁、果肉、牛乳や生クリーム、砂糖など。これの牛乳や生クリームが入っていないのがシャーベットである。
 また、アイスクリームとの違いは空気含有率で、アイスクリームが50〜60%に対してジェラートは35%未満と少ないため、密度が増し味にコクがある。一方、乳脂肪分は4〜8%と、一般的なアイスクリーム(8%以上)より低い。そのため日本でジェラートは、アイスクリームではなくアイスミルクの分類となっている。
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 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2019年07月08日月曜日


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