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<参院選宮城 その声届くか>老後資金問題/被災者、生活憂い尽きず

自宅で預金通帳を見つめる芳賀さん。貯蓄は自宅の再建に使い切り、年金頼みの生活を送る(写真の一部を加工しています)
自宅で預金通帳を見つめる芳賀さん。貯蓄は自宅の再建に使い切り、年金頼みの生活を送る(写真の一部を加工しています)

 参院選(21日投開票)の終盤に向け、宮城選挙区の候補者の訴えは熱を帯びている。政権への評価と批判が梅雨空に響く一方、疲弊した地方を立て直す具体策は多く語られない。政治への期待が薄れる地域で、それでも届いてほしいと願う声を聞く。

 老後の安心はかなうのか。石巻市の街頭で11日、参院選宮城選挙区に立候補する与野党の陣営が論陣を張った。「不安をゼロにはできないが小さくはできる」(自民党)「年金制度は抜本的な改革が必要だ」(立憲民主党)
 各党が示す処方箋をよそに、年金問題は東日本大震災の被災地を暗く覆う。

<貯金残高はゼロ>
 「老後資金なんてどこにもない。1カ月暮らすのがぎりぎり。医療費も増え、足りないぐらいだ」
 同市湊町の無職芳賀良孝さん(65)がつぶやいた。
 月収の柱は厚生年金。妻(64)と合わせても12万円に届かない。同居する認知症の母親(88)が受給する遺族年金は医療費やデイサービス利用料に消える。
 貯金はない。震災の地震で木造2階の自宅は大規模半壊した。母は仮設住宅で暮らせず、敷地のプレハブ平屋で1年近く暮らした。
 2012年、津波で全壊した親戚宅を1000万円で買い取り、居間、風呂、トイレ、台所などを700万円以上かけて修繕した。早期退職で得た退職金と貯蓄を全てつぎ込んだが、外構や外壁は直せていない。
 大腸がんを患い、その後も慢性膵(すい)炎などにかかり就職は難しい。親戚から野菜をもらったり米を安く買ったりしてやりくりする。
 「(家を)直したからといって復興にならない。そもそも生活が復興していないんだ」。くたびれた表情で芳賀さんが嘆いた。

<報告は「夢物語」>
 選挙戦で独り歩きする「老後資金2000万円」。南三陸町志津川の理容師小山直さん(49)はクールに受け止める。
 「2000万円足りないという金融庁の報告は自分にとって夢物語。老後に背伸びした生活をすればお金がかかるのは当然」
 中心市街地にあった店舗兼住居を津波で失った。昨年4月、防災集団移転団地に住居と店舗を再建。母、妻、高1の長女、小5の次男の5人で暮らす。
 収入は震災前に比べ2割減った。自宅のローンの返済は2050年までかかる。理容店の再建はグループ化補助金を使ったが、自己負担分の返済は37年まで続く。
 小山さんは「毎月ローンや仕事関係の支払いに追われ、いくら働いても楽にならない。年金より、今を生きるので精いっぱいだ」とため息をついた。
 投じる1票は安心につながるのだろうか。「震災で人生設計が狂った。定年はないが、いつまで元気に働けるか見通せない」。小山さんの憂いは尽きない。
(石巻総局・氏家清志、南三陸支局・佐々木智也)


関連ページ: 宮城 社会 19参院選

2019年07月13日土曜日


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