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<参院選東北>営みの中で/虐待防止 難しい介入、抱える葛藤

公園を散歩する母と子。児童虐待が増加し、子どもの命をどう守るかが問われている=仙台市青葉区

 電話は一方的に切られた。「もう大丈夫。関わらないでください」。母親の口調は強かった。

<親との面会 鉄則>
 仙台市児童相談所(青葉区)の児童福祉司藤原悠輝さん(31)=仮名=は虐待が懸念される家庭の相談・支援を担当する。親と面会し、生活状況を確かめるのが鉄則。だが、「面会を断られることは、しょっちゅうある」と苦笑いする。
 青葉区に暮らす20代夫婦と小学生男児の3人家族をサポートしている。今年2月、夫婦げんかから父親が母親を殴り、警察沙汰になった。子どもの前で配偶者に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」が疑われ、継続的ケアが必要と判断した。
 母親に電話で面会を断られ、藤原さんは次の手段に出た。事前連絡なしで、先輩職員と家族のアパートを訪問した。
 「近くまで来たので立ち寄りました」。玄関ドアの外から声を掛けた。間を置いて少しだけドアが開く。母親の顔があった。
 会話を続けると「夫のDVがつらい」と本音が漏れた。じっくりと話を聞き、支援機関の利用など多数の選択肢があると伝えた。男児の無事も確かめた。
 急な訪問が成功する日ばかりではない。居留守を使われることも多い。そんなときは「また来ます」と手紙をポストに入れ、返事が来るのを待つ。親との間合いを少しずつ詰める。
 改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が6月19日に成立した。「しつけ」と称した親の体罰を禁止し、児相職員を「介入」「支援」の担当に分け、一時保護をためらわない体制を整える。東京都目黒区と千葉県野田市の児童虐待事件で、児相の不手際が相次いだのがきっかけだった。

<共に解決策探す>
 仙台市泉区でも5月、父親から暴力を受けた小学生男児が交番に駆け込む事案があった。事前に男児の訴えを聞いた学校は市児相に連絡したが、市児相は一時保護は不要と判断。発生したのはその2日後だった。
 虐待が疑われたら一刻も早く介入し、児童を守る。それが今の社会の要請だ。
 とはいえ強制権の発動には手順がある。まずは親に児相への出頭を求め、応じない場合に立ち入り調査ができる。それでも鍵は勝手に開けられない。裁判所の許可が必要になる。
 「児相職員はスーパーマンじゃない。介入すれば全て解決すると世間は思うのだろうが、それは違う。限界もある」。市児相の一條明所長が訴える。
 藤原さんも改正法の効果にやや懐疑的だ。「法律で禁止したところで、親の意識が変わらなければ虐待はなくならない」と語る。
 子育てのストレス、経済的困窮など虐待の誘発要因を取り除き、親たちに「暴力は許されない」と説くことが最善の道と信じる。
 「児相は警察とは違う。親の心の内に寄り添い、一緒に解決策を探す。児相の存在意義はそこにある」
(報道部・田柳暁)


関連ページ: 宮城 社会 19参院選

2019年07月13日土曜日


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