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<参院選宮城>その声届くか/汚染廃棄物 処理長期化 消えぬ不安

汚染廃棄物を積んだトラック周辺の空間線量を図る作業員=6月、宮城県大崎市古川(写真の一部を加工しています)

 「なぜ地元の同意なしに試験焼却を続けるのか」。宮城県大崎市岩出山池月の町内会長阿部忠悦さん(79)が怒りをあらわにする。自宅の約800メートル西には、大崎地域広域行政事務組合の西部玉造クリーンセンターが立つ。
 センターでは2018年10月以降、東京電力福島第1原発事故で生じた国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)以下の汚染稲わらや牧草を、一般ごみと混ぜて試験焼却している。

<住民有志が提訴>
 試験焼却の開始直前、阿部さんら住民有志は、組合と大崎市に試験焼却への公金支出の差し止めを求める訴訟を仙台地裁に起こした。「焼却施設の機能変更には行政と町内会の事前合意が必要、と定めた07年の申し合わせに反する」と強調する。
 大崎市の抱える基準以下の廃棄物は約6000トン。県内で加美町に次いで量が多い。うち約2900トンが焼却の対象で、試験焼却では47トンが燃やされる。残りは山間部などでシートをかぶせて保管されたままだ。廃棄物処理が全て終わる時期は見通せず、市にとっても頭の痛い問題だ。
 廃棄物の処理には国の補助金と交付金が使われている。しかし、住民の健康不安を除くため、市独自で実施する甲状腺検査費や試験焼却を巡る訴訟費用など、市にとっては当面の持ち出し分の負担ものし掛かる。
 阿部さんは「8000ベクレル以下の廃棄物も本来は国と東京電力の責任。自治体に押し付けた法自体廃止すべきだ」と訴える。

<2氏とも触れず>
 県内では、基準以下の汚染廃棄物約3万6000トンが自治体に処理を委ねられた。一方、国の責務で処理する8000ベクレル以上の指定廃棄物も白石、登米など9市町に保管されており、長期管理施設の立地場所は決まっていない。
 参院選宮城選挙区に立候補する自民党現職の愛知治郎氏(50)は12日、大崎市内で街頭演説し「震災復興プランを成し遂げ、国土強靱(きょうじん)化を進める」と強調した。立憲民主党新人石垣のり子氏(44)は9日、市内であった演説会で、東北電力女川原発(女川町、石巻市)再稼働に反対する姿勢を明確にした。
 だが、両氏とも汚染廃棄物問題に触れることはなかった。愛知氏の演説を聞いた60代の農業男性は「汚染廃棄物は早く処理してほしいが、住民の間でも話題に上ることは少なくなった」とつぶやいた。
 原発事故から8年。健康や農作物への影響など、目に見えない放射性物質への地域住民の不安は置き去りにされたまま、廃棄物処理を巡る問題への風化が始まっている。
(大崎総局・喜田浩一、大河原支局・山口達也)


2019年07月14日日曜日


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