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<参院選東北>営みの中で/事業承継 社長3度目 後任どこに

空調設備の工事現場で指示を出す宮部さん(右下)=仙台市青葉区

 天井板を外し、他の配線を傷つけないよう、配管や室内機を取り付ける。巨大な室外機をクレーンで屋上へ運ぶ。空調設備の改修工事には技術と経験に加え、取引先や地域との信頼関係が欠かせない。

<「廃業はしない」>
 仙台市宮城野区の「空調企業」。1974年設立の中小企業だ。経営も順調だが、創業者の会長兼社長宮部和夫さん(72)の表情はさえない。事業の引き継ぎに3度失敗し、社長に就いたのも3度目になる。
 「年を取った自分はいつどうなるか分からない」。誰に後を任せればいいのか。毎日頭を悩ませる。なかなか答えは出ない。地域経済を下支えし、東日本大震災も乗り越えた宮部さんの双肩に事業承継問題が重くのしかかる。
 盛岡市と東京に事務所を構え、約60人の従業員を抱える。仙台を中心に、主に自治体が発注した空調設備の取り付けや改修、維持管理を担ってきた。
 新技術を開発したこともある。手掛けた施設は仙台市地下鉄南北線の勾当台公園駅や病院、学校、消防署と幅広い。震災で全壊した本社ビルは自己資金のみで再建した。
 最初に世代交代を図ったのは50代に差し掛かった頃だった。社員に経営を託したものの2年で負債が2億円に膨らみ、社長に返り咲いた。その後も別の社員や息子に任せたが、いずれも体調を崩すなどしてリタイアしてしまった。
 「取引先も銀行も人を見る。関係の長い会社でも、経営者が変われば同じような付き合いができるとは限らない」。たとえM&A(合併や買収)に走っても成功の保証はない。経営を引き継ぐ難しさを痛感した。
 トップ不在の企業は存在し得ない。このままでは最終的に事業が行き詰まってしまう恐れもある。「廃業の選択肢だけはない」。苦楽を共にした従業員とその家族を路頭に迷わせるわけにはいかない。宮部さんの口調に決意がにじむ。

<支援 場当たり的>
 東京商工リサーチ東北支社によると、負債がないまま休廃業した東北の企業は2018年度、初めて3000件を突破した。経営者の高齢化が原因となったケースも多く含まれる。後継者難による企業の撤退が、地域経済の基盤をゆっくりと浸食していく。
 政府は相続税の猶予、地方銀行の出資上限緩和など、中小企業の事業承継支援をうたう。だが、宮部さんは、どれも場当たり的に思えて仕方がない。
 「消費税増税も外国人雇用拡大も、人や金が足りなくなったから補うという発想しか見えない。企業ならとっくにつぶれている」
 どんな国を目指し、国民に何をするのか。政府も国会も厳しい未来を直視し、打開策を必死で探ってほしいと願う。地域で踏ん張る経営者と同じように。(報道部・高橋一樹)


関連ページ: 宮城 社会 19参院選

2019年07月14日日曜日


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