山形のニュース

<劇動・参院選ルポ>(5)山形/農業票取り込み必死

農業政策に関する候補者の訴えを聞く農協職員ら(上)と、街頭演説の後に気勢を上げる支持者のコラージュ

 農業者票の行方が勝敗を左右してきた選挙区で、「攻めの農業」への期待と疑念が交錯する。

<「世界へPR」>
 「佐藤錦の海外輸出は6年間で8倍に増えた。もっともっと売って、農家の手取りを増やしていく」
 東根市の街頭で10日夕、首相安倍晋三は自民党現職大沼瑞穂の応援マイクを握った。農林水産物輸出額1兆円を掲げる政府の成長戦略が、特産サクランボにもたらした恩恵を強調。大沼も「地理的表示(GI)保護制度によるブランド化で、世界にPRしていくことが大事」と声を張った。
 自民は前回の2016年参院選で農業者票をまとめ切れず、公認候補が舟山康江(非改選)に大敗した苦い経験がある。環太平洋連携協定(TPP)への対応を巡って、山形県農協政治連盟(県農政連)が推薦を見送り、自主投票としたことが大きく響いた。
 その県農政連が今回、12年ぶりに自民候補の推薦を決めた。実情は多弱化した野党を見限っての自民回帰。官邸主導で進む輸入拡大や農協改革への不満と警戒感は消えていない。
 「日米貿易交渉はトランプ大統領にやられっぱなし。JAグループの総意を受け止め、日本に不利となれば与党の力で押し戻してほしい」
 公示日の4日、山形市であった大沼の出陣式。県農政連会長の黒井徳夫は激励の言葉もそこそこに、重い注文を突き付けた。

<戸別補償訴え>
 対する無所属新人芳賀道也の陣営は、県農政連の推薦が相手候補に出ても農業者票は固まり切っていないとみて取り込みを狙う。
 「舟山さんと一緒に戦っています」。TPP反対を訴え、前回大勝した選対本部長舟山の名前を農村部で連呼し、支持を呼び掛ける。
 最上地方を回った5日は金山町の農協前で「戸別所得補償を復活、拡充し、中山間地でも収入を確保できるようにする。それが古里の荒廃を防ぎ、国土を守ることにつながる」と訴えた。
 芳賀が農繁期の庄内地方を巡った6日、舟山は庄内町の計9カ所で座談会を開き、生産者ら計約300人と懇談した。
 「今の農政が良いという声を聞いたことはないと話すと、みんなうなずく」と舟山。「規模拡大や企業参入、輸出拡大の路線はおかしいという声が大多数。自民党がばらまきだと批判した戸別所得補償こそ求められている」と勢いづく。
 自民も家族営農や中山間地への支援強化を公約に加え、「中小農家切り捨て」との批判をかわそうと気を配る。
 野党は農家に寄り添う姿勢をさらに強調し、期待をつなぎとめようと躍起だ。(敬称略)

 21日投開票の参院選で、全てが「自民現職対野党統一候補」の構図となった東北6選挙区(改選数各1)は各地で激戦が繰り広げられている。16年参院選と同様、与党優位が伝えられる全国情勢とは一線を画す。6県の戦いに迫った。


2019年07月14日日曜日


先頭に戻る