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<参院選>選択の焦点(1)男女候補 同数未達は違法

上野千鶴子氏(うえの・ちづこ)1948年富山県生まれ。京大大学院社会学博士課程修了。専門は女性学、ジェンダー研究。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(東京)理事長。

 参院選(21日投開票)は後半戦に入った。与野党の論戦では、国の針路を巡り多くの対立軸が浮上している。4人の識者に選択の焦点を聞いた。
(4回続き)

◎社会学者、東大名誉教授 上野千鶴子氏

 候補者男女均等法(政治分野における男女共同参画推進法)が施行されて初の国政選挙となったが、女性候補の割合は3割にも届かなかった。政党や政治団体が、候補者をできる限り男女同数にする努力義務が守られなかった。法律違反だ。
 今年4月の東大入学式の祝辞で性差別の根深さを指摘し、多くの共感と反発が寄せられた。東大が私を選んだのは、昨年の東京医科大の不正入試問題や女性が性被害を訴える「#MeToo運動」により、ジェンダー問題を無視できない空気が耕されていたから。

<全会一致で可決>
 参院選でメディア各社が「女性候補が過去最高28%」などと報道したのには失望した。社民党71%、共産党55%、立憲民主党45%と野党は割合が高いが、自民党15%、公明党8%と与党は低い。昨年5月の国会で全会一致で可決したのに。最初から守る気がなかったのか、と言いたくなる。
 日本は名目だけで実効性のない法律ばかり作る。達成できない政党には、政党交付金を支払わないぐらいのペナルティーを科すべきではないか。
 女性が立候補しにくい大きな要因は、夫や親族の家庭内抵抗勢力。妻が夫より目立つことを快く思わない意識がある。参院選1人区も不利に働いた。どんな世界も女はナンバー2で順番がなかなか回ってこない。

<地方議会改革を>
 女性議員を増やすには、地方議会改革を進めるべきだ。議員報酬をパートや日当制にし、議会を夜間に開くなど、他の仕事と両立できるようにすれば本当に地域を思う女性が参入する。議員が特権身分でなくなれば、退いていくオヤジたちもいるだろう。地方議員の女性の層が厚くなれば、国会議員を送り出すための人材のプールになる。
 今回、野党は争点に老後資金2000万円問題を持ち出した。2007年参院選で第1次安倍政権を惨敗に追い込んだ「消えた年金」の成功体験があるからだが、追い風は吹いていない。
 自民は下野した失敗から学び、火を消すのに懸命になっている。自民は政権与党であることにしか存在意義がないからだ。野党の四分五裂に比べ、政策や理念の不一致がある相乗り所帯であっても自民は絶対に割れない。権力への執着心が安定政権を生み出した。
 老後2000万円問題で金融庁審議会の報告書はサラリーマンと専業主婦の世帯をモデルとして示す。日本社会は社会保障を個人ではなく世帯単位にすることで、長きにわたって「男性稼ぎ主モデル」に固執し、女性の社会進出を妨げてきた。
 安倍政権は雇用拡大を強調するが、増えたのは非正規雇用が中心。これらの体たらくは政界、財界、官界、労働界のオヤジたちの共犯による政治の人災だ。有権者も共犯者であることを忘れてはならない。
(聞き手は東京支社・橋本智子)


2019年07月14日日曜日


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