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<ニュース深掘り>復興期間内の調査急務 生活再建進まぬ在宅被災者

地震と津波で1階の一部が被災した石巻市内の住宅。この家に住む在宅被災者は8年たった今も風呂場が直せていない

 東日本大震災で被災した自宅を修繕し切れず、壊れたままの住宅で暮らし続ける在宅被災者が、宮城県内の広域で多数存在することが分かってきた。国の復興期間は2020年度で終わる。国と自治体は早急に実態を調査し、全容を把握すべきだ。
 被災住宅の修繕に対し、県内の沿岸15市町が独自に創設した補助金事業の支給総件数が、想定の半数にとどまっていることが河北新報社の調査で判明した。
 在宅被災者を支援する一般社団法人「チーム王冠」(宮城県石巻市)によると、未申請の背景には高齢で複雑な制度を理解できなかったり、修繕した際の領収書を再発行できなかったりするケースがあった。被災者が一時的に立て替え払いするため、低所得で費用を捻出できない被災者も少なくない。
 課題解決に向け、石巻市は昨年秋、訪問調査に踏み切った。修繕の補助金事業を利用せず、市の通知にも反応がない約3000世帯を対象に実施し、調査できた約1900世帯のうち、670世帯以上が修繕の意思を示した。
 被災家屋に対する固定資産税軽減措置の見直しのため、同市や仙台市など県内の複数の自治体が行った損壊家屋の修繕状況調査では、修繕未完了の家屋が県内で1万5000棟以上あるとみられることも明らかになっている。
 訪問調査は自治体にとって人的、財政的な負担が大きく、民間団体との連携が必須だ。委託料などの財源には復興庁の被災者支援総合交付金が活用できる。被災者の生活再建や心のケア、コミュニティーづくりなどソフト事業が一本化されており、本年度は177億円が措置された。
 同交付金について、渡辺博道復興相は4月10日の参院震災復興特別委員会で「大変使い勝手が良い。自治体は(在宅被災者の)見守りや相談支援に積極的に活用してほしい」と答弁している。
 自治体独自の住宅支援の原資となる復興基金も余っている。同基金は修繕を含む被災者の住宅再建のため、宮城県の沿岸15市町が独自に創設した補助金事業の原資になっている。昨年度末時点、約160億円が余っている。現段階では20年度末時点で少なくとも36億円が残り国庫に返還される見通しだ。
 在宅被災者の実態が判明しても、財源がなければ自治体独自の支援事業は難しい。時間はあまりない。早急に調査に着手し、復興期間中の事業実施に間に合わせる必要がある。
 在宅被災者の中には、経済苦や健康問題など複雑な生活課題を抱えている人が多い。解決に向け、災害ケースマネジメントの有効性はぜひ指摘しておきたい。この仕組みは被災者の個別事情を酌み取り、自治体や専門家が連携して支援に当たる。財源には被災者支援総合交付金が使える。
 震災直後、住宅問題は復興に向けた最大の課題だった。災害公営住宅の建設や防災集団移転促進事業が猛烈な勢いで進む一方、在宅被災者への対応は遅々として進まなかった。
 震災から8年4カ月が過ぎても生活再建がかなわない人たちがいる。在宅被災者の問題は待ったなしの課題と言える。国や自治体はこの現実を正面から直視すべきだろう。
(石巻総局 氏家清志)

[宮城県内沿岸15市町の補助制度] 2012、13年度、災害危険区域外の被災者向けの住宅再建事業としてそれぞれ導入された。住宅の新築や補修など再建費用の一部を補助する。津波被災地域の住民の定着を促すのが狙い。利府町と松島町は11年度、一部損壊住宅を対象に3万〜20万円を補助する独自制度を創設した。


2019年07月15日月曜日


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