福島のニュース

<劇動・参院選ルポ>(6完)福島/苦い記憶呼び覚ます

参院選勝利へ気勢を上げる支持者ら=13日、相馬市内

 二つの「記憶」を巡って両陣営が舌戦をヒートアップさせる。

<「復興に支障」>
 「8年前を思い出してほしい。無責任な、あの民主党政権に戻していいのか」
 5日、福島選挙区(改選数1)の自民党現職森雅子が福島県富岡町で行った街頭演説。マイクを握った元党県連幹事長の県議会議長吉田栄光が、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の記憶を呼び起こした。
 当時、浜通り地方は避難で混乱を極め、政権を担っていた旧民主は激しい反発を浴びた。自民にとって格好の攻撃材料だ。吉田の隣に立った森は「残された全人生を懸け、復興に取り組む覚悟だ」と悲壮感を漂わせて声を張り上げた。
 元少子化担当相の実績と知名度で優位とみられた情勢は3月、野党統一候補として無所属新人水野さち子が浮上して一変。森の表情も引き締まり、陣営も「厳しい選挙」を繰り返す。
 決して選挙に強いわけではない。2006年知事選で敗れ、改選数2で争った07年参院選は旧民主の後じんを拝して2位当選した。
 1枠に減った13年は旧民主への逆風もあって6人による乱戦を制したが、今回は野党統一候補との事実上の一騎打ち。現職閣僚が野党共闘に屈した16年の敗戦も生々しく脳裏をよぎる。
 福島市での第一声には首相安倍晋三が駆け付け、党本部は幹部らを送り込んで政権の威光を誇示。「参院から福島の自民議員がいなくなったら復興に支障を来す」と陣営は危機感をあおり、引き締めを図る。

<会津魂に訴え>
 一方の水野陣営が呼び覚ますのは会津のDNAに宿る記憶だ。
 「今の自民はすぐ野党を嘲笑する。反対勢力をいじめ抜いた長州のいやらしい部分が出ている」。郡山市で6日あった水野の個人演説会で、無所属衆院議員の玄葉光一郎(福島3区)は戊辰戦争の話題を持ち出し会場を大いに盛り上げた。
 戊辰戦争で会津藩は薩長の新政府軍に敗れ、遺恨があるとされる。元県議の水野は会津若松市出身。陣営は住民らの「会津魂」を巧みにくすぐる。
 10日の同市での個人演説会では会津地方を地盤とする国民民主党衆院議員の小熊慎司(比例東北)が「今夜飲む酒の銘柄は会津美里町の『風が吹く』だ」と笑わせた。
 会津のほかに陣営が武器とする野党共闘は「原発ゼロ」が旗印。9日、水野は富岡町の個人演説会で「まだ原発をベースロード電源にしている」と政府を鋭く批判。森陣営との対立軸をことさら強調してみせた。
 共闘を支える立憲民主と国民民主、社民各党もアクセルを踏み込む。
 「『共闘』を強調する場面を浜通りでつくれ」。陣営幹部の号令に、共産を含めた野党4党の街頭演説が急きょ18日にいわき市で設定された。
 「届いてはいないが、急速に迫っている。ここで本気の共闘を見せつける必要がある」と関係者。野党が歓喜に沸いた3年前の再来を期し、ラストスパートをかける。(敬称略)
                ◇
 21日投開票の参院選で、全てが「自民現職対野党統一候補」の構図となった東北6選挙区(改選数各1)は各地で激戦が繰り広げられている。16年参院選と同様、与党優位が伝えられる全国情勢とは一線を画す。6県の戦いに迫った。


2019年07月15日月曜日


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