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<参院選>選択の焦点(2)防衛省失態 権力のおごり

佐藤優(さとう・まさる)同志社大大学院修了。1985年外務省入省。在ロシア大使館勤務を経て、主任分析官を務めた。著書に「国家の罠(わな)」「自壊する帝国」など。東京都生まれ。59歳。

 参院選(21日投開票)は後半戦に入った。与野党の論戦では、国の針路を巡り多くの対立軸が浮上している。4人の識者に選択の焦点を聞いた。
(4回続き)

◎元外務省主任分析官 佐藤優氏

 6月末の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)を最大限に活用したのはトランプ米大統領だろう。期間中、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に突然会いたいとツイッターに書き込んだ。ハプニングショーのように見せかけたが、非常によく演出されていた。
 両氏の会談は意外なことではない。トランプ氏は軍事面のリストラをやろうとしている。米国の伸びきった戦線を縮小させようという意図がある。

<日米安保は取引>
 北朝鮮とは仲良くするのが基本的な考え。情勢が緊張しているイランとの二正面作戦は展開できない。脅威とは意思と能力の掛け算だ。北朝鮮が核兵器を持っていても、使う意思がなければ、脅威ではない。トランプ氏の狙いはそこにある。日本が関与しない形で朝鮮半島情勢が進んでいるのはマイナスだ。
 トランプ氏は基本的に不動産屋としての考え方を持っている。日米安全保障条約すら、「ディール(取引)」と捉えている。「不公平な合意」との発言の裏で、米国の兵器や農産物の購入を安倍政権に迫ってくるだろう。同時にトランプ氏の支持層に日本が安保にただ乗りしているとの議論があるのも間違いない。
 私の見方では、G20では日本の成果もあった。首相がロシアのプーチン大統領との会談で、歯舞群島と色丹島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎に、平和条約締結交渉を加速させると確認した。ロシアはかなり強硬だったが、日本が巻き返した格好だ。

<外交の成果 宿願>
 秋田、山口両県が配備候補地となっている地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」は、ロシアが開発している新型の巡航ミサイルにシステムを破られるとみている。米国からのシステム購入による産業政策と考えた方がいい。
 防衛省がグーグルアースを使い、調査結果を間違えたのは場所ありきだからだ。狙いが透けている。バランスの取れた考えだった佐竹敬久秋田県知事の感情を刺激してしまった。権力のおごり。政府に出口戦略はなく中央突破を図るだろう。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡る政府と沖縄県の対立構図と同じだ。
 参院選の論点は政治の安定か、混乱かだろう。外交がうまく進むには、政権の安定が前提になる。選挙で外交が論点になれば、与党に有利に働く。有権者の安定志向に訴え掛ける自民の戦略が成功しているように映る。
 安倍晋三首相は党則を改正し、総裁連続4選を狙っていると思う。宿願は憲法改正ではないはずだ。北方領土と、北朝鮮による日本人拉致問題の解決を見据える。歴史の教科書に残るような外交の成果を上げたいのではないか。
(聞き手は東京支社・吉江圭介)


2019年07月15日月曜日


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