宮城のニュース

<参院選東北 営みの中で>水産改革/工場空転 加工置き去り

タラの加工を手掛ける石巻市の水産加工会社。震災直後には想定できなかった苦境に直面している

■売り上げ6割に
 東日本大震災からの再起を誓い、巨費を投じた工場が空転する。
 「売り上げは震災前の6割。設備の稼働率がさっぱり上がらない」
 水産都市・石巻で水産加工会社を営む斎藤良郎さん(67)=仮名=の嘆きは深い。津波で製造ラインが被災。グループ化補助金を活用し、数億円をかけて設備を一新した。
 心機一転して臨んだ復興の道は険しかった。
 生産休止を余儀なくされた震災後の約1年間で、大口の取引先が離れていった。販路の回復と開拓に奔走したが、東京電力福島第1原発事故の風評が立ちはだかった。
 時間だけが過ぎ、再建に活用した補助事業の自己負担分の返済が本格化する。「今は1回当たりの返済額を減らしてもらっているが、課題を先送りしているだけだ」
 苦境に立つ業界の足元を見てか、大手の卸先は仕入れ値を押し下げてくる。少ない利益を得ようと漁業者と加工業者が対立する。斎藤さんの訴えは切実さを増す。「漁業者から小売りに至る一連の流れを変えないとますます収入が縮む」

■事業断念相次ぐ
 「水産業を成長産業に」。昨年12月、70年ぶりに漁業法が改正された。新たな資源管理システムの導入が改正の柱となる。しかし、国主導の水産改革は復興途上の水産加工団地に空虚に響く。
 「水産庁主導の話だから漁業者が主体になる。海と消費者をつなぐ買い受け人や加工業者は置き去りにされている」。石巻魚市場買受人協同組合の布施三郎理事長(69)が硬い表情を浮かべる。
 影響は未知数だ。資源管理の在り方は、漁業者のみならず水産加工業者の浮沈や国民の食卓に直結していく。
 主力魚種の水揚げ減少。原材料の高騰。震災直後には想定できなかった環境の変化もまた、加工業者にのし掛かる。業界は漁船誘致や販路開拓に全力を挙げるが、はかばかしくない。
 水産庁は今月以降、漁業者や水産加工業者、消費者を交えた検討会を開き、資源管理に向けた具体的な手法、水揚げ量を探る方針。不安が渦巻く中、改正法は来年12月までに施行される。
 ここ数年、石巻市内では事業継続を断念する水産加工業者が目立ってきた。震災後、補助金や国の支援制度を活用したものの販路喪失と漁獲減で売り上げが回復せず、借金返済が行き詰まるケースが多い。
 水産加工業界は改革の荒波に耐え得るだろうか。布施理事長は同業者の窮状を代弁する。
 「おいしい魚を手頃な価格で消費者に届けるのがわれわれの使命だが、もう疲れ果ててきた。本当ははっきりと声を上げるべきかもしれないが…」
(石巻総局・関根梢)
=随時掲載


関連ページ: 宮城 経済 19参院選

2019年07月17日水曜日


先頭に戻る