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<参院選>選択の焦点(3)産業成長 地方にチャンス

もたに・こうすけ 東大法学部卒。1988年日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。2012年から日本総合研究所主席研究員。著書に「里山資本主義」「デフレの正体」など。山口県生まれ。55歳。

◎日本総研主席研究員 藻谷 浩介氏

 2018年の日本の経常収支はドイツに次ぐ世界2位で19兆円の黒字だ。輸出総額は81兆円で過去最高だった。国際競争には負けていない。好景気の実感が乏しいのは、個人消費の伸び悩みに尽きる。

<就業者減も背景>
 株価上昇で一部の大企業や個人投資家に利益が集中し、本来なら消費活動が活発な若年層や子育て世代に金が回っていないというのが日本経済の実態だ。安倍政権は株価の上昇を実績に挙げているが、浮かれている場合ではない。株でもうかった人は貯蓄が目的で消費しないからだ。
 貯蓄は必ず消費に回るという考え方が「アベノミクス」のトリクルダウン理論の基礎になっているが、現実にはそうした現象は起きていない。個人消費が伸び悩む一方、国の借金は空前の規模で増え続ける。これでよく経済指標がマイナスにならなかったと思う。
 個人消費が伸びない背景には就業者数の減少もある。新卒者ら若い人の就職率の上昇は、人口が減っているのだから当然。出産や子育て後の女性の職場復帰で45〜64歳の就業者数は徐々に増えている。ただ、女性や定年後に再雇用した人を賃金が安いパートで雇うから消費に結び付かない。
 これまで1人の正社員が担っていた仕事を3人ぐらいのパートで補っている。働く人は増えても給料は増えず、当然消費にも反映されない。金融資産に対する相続税の課税など、あの手この手で貯蓄している資産家から回収し、子育て世代に投資することで消費を喚起するしかないだろう。

<気付く人少ない>
 人口減少社会の中で成長している産業分野は、1次産業と訪日外国人観光客向け事業だ。都会より地方の方がはるかに可能性がある。だが、チャンスに気付く地方在住の人は少ない。
 政府の地方創生政策は、都会の若者を地方に呼び込むことについてはあながち失敗はしなかった。ただ、その人数をはるかに上回るペースで地方から都会への流出が止まらない。
 政府の失敗は、地方出身の若者が持つ「地方は駄目だ、こんな所に可能性はない」という思い込みや固定観念を変えることに一切、手を付けなかったことだ。地元のことをよく知り、将来性に気付かせるような教育に取り組まなければ、この流れは続く。
 都会から地方への人の流れは東日本大震災の被災地でも、まちづくりや復興に一定の役割を果たしている。21年3月には国の復興・創生期間が終わる。補助金や支援は一定程度なくなる。どのぐらいの人が残り、どんな成果を上げられるかが問われる。
 安倍政権の震災復興は基本的に防潮堤整備、かさ上げに代表される公共工事だ。国の支援が切れた後、インフラだけが残ったということにもなりかねない。(聞き手は東京支社・山形聡子)


2019年07月17日水曜日


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