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<参院選>選択の焦点(4完)地方の視点で政策判断を 

牧原出(まきはら・いづる)東大法学部卒。東北大大学院教授などを経て、2013年から東大先端科学技術研究センター教授。専門は政治学、行政学。近著に「『安倍一強』の謎」。愛知県生まれ。51歳。

 参院選(21日投開票)は後半戦に入った。与野党の論戦では、国の針路を巡り多くの対立軸が浮上している。4人の識者に選択の焦点を聞いた。

◎東大教授 牧原出氏

 参院選で問われるものは何か。政治的な対立が見えず、今回は本当に難しい。先の通常国会は後半に予算委員会が開かれず、与党は対決法案の提出も控えた。争点隠しと言える。元々前のめりな安倍晋三首相が衆院解散を見送ったので(単独の参院選の意義は)政権の実績を問う最後の信任投票かもしれない。

<手薄な生活関連>
 政策的には10月に控える消費税増税が一つの論点。予定通り増税する場合には景気対策、反対なら財政再建をどう進めるのか。
 自民党は憲法改正、政治の安定といった大きなテーマを掲げる一方、生活関連はやや手薄に映る。野党は最低賃金の引き上げを主張するが、マクロ経済政策をどう考えるのか。
 東北では、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」は配備ありきの雑な政策決定だ。農政や地方創生は特効薬がなく、地域の問題を国政にどれだけ反映できる候補者か見極めたい。与野党問わず地方の視点での選択が重要になる。
 10年の区切りが近づく東日本大震災からの復興再生は、超党派で捉えるべき課題。東京電力福島第1原発事故の影響が根深い福島はこれからが正念場となる。争点というより、選挙戦でどれだけ真剣に取り上げているかをチェックしたい。
 これまでの安倍政権の成果はアベノミクスと安全保障関連法制定の二つ。他にめぼしいものはなく「レガシー(政治的遺産)のない長期政権」と指摘される。中曽根康弘氏のエリート意識、小泉純一郎氏のスマートさは安倍首相にない。

<弱者支援が苦手>
 半面、上から目線やリベラル的な知性が世界的に反発を受ける時代にあって、世代やイデオロギーに距離を置き、一生懸命取り組む「普通さ加減」が広く薄く、冷たい共感を得ている。
 官邸チームに専門能力はあるが、同質性が極めて強く防御的で報復主義。外交や危機管理には向くが、弱者支援は決定的に不得手だ。内政は次々と目玉を繰り出すが、女性や多様性、鼓舞が欠落し粗くて大ざっぱ。政権交代からくる短期的な視野の弊害も出ている。
 片や分裂状況が続く野党は、底から徐々に立て直すプロセスにある。次の衆院選につながるだけに、今回の野党共闘は重要だ。自公政権も、そもそも野合に近いセット。連立政権や野党共闘は、抵抗感を乗り越えなければ成立しない。
 北海道や東北、沖縄など首都から遠ざかるほど野党が健闘した前回(2016年)参院選の傾向は、ある程度持続している。それを学習して地方にどう浸透するか。投票率が低くなれば、組織力のある与党が勝つ可能性が高まる。
 2度の政権交代を通じ衆院選サイクルが早まる中、任期6年の立場で国政を担う参院は貴重。議員は自らの選挙区事情をよく理解することが求められる。合区が1票の格差に直結しており、参院の役割や選挙制度を根本から見直す時期にも差し掛かっている。
(聞き手は東京支社・瀬川元章)


2019年07月18日木曜日


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