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<参院選東北>営みの中で/年金改革 給付抑制家計切り詰め

年金の給付抑制に対し抗議行動をする市民団体。「2000万円問題」を機に年金制度への関心が高まっている=5日午前、仙台市青葉区一番町

<野菜作り 実益に>
 ささやかな趣味だった家庭菜園が、だいぶ前から「実益」になった。
 多賀城市の無職田川浩三さん(81)=仮名=は、自宅そばの小さな畑で20種類近くの野菜を作る。「ジャガイモやタマネギは保存が利く。スーパーで買わずに済み、家計が助かる」
 宮城県内の金属加工会社を60歳まで勤め上げた。厚生年金と国民年金の合計は月約16万円。妻は約5万円で、計約21万円の月収でやりくりする。
 介護保険料などの負担に加え、医療費が家計に重く響く。定年から数年たった2001年、三女が心を病み、入院した。「節約して、ゆっくり暮らそう」というプランは吹き飛んだ。
 以来、入院は18年に及ぶ。三女の障害年金(2級)は月約6万5000円で入院費に届かない。病院で必要な物を買うお金も必要だ。年金から月2万円以上を補っている田川さんは「人生、何があるか分からない」とこぼす。
 自身もがんで胃の半分を取り、腰も手術した。加齢で目も患い、毎日さまざまな薬を10錠飲む。「自分が死んだら娘は、妻はどうなるのか」

<15%「貯蓄なし」>
 不安に追い打ちをかけるのが、今後見込まれる年金額の減少だ。少子高齢化によって支え手が減る一方、受給者が増える年金制度を維持するため、政府は給付の抑制を強化している。
 19年度の年金額改定では、伸びを抑える「マクロ経済スライド」が4年ぶりに発動された。未実施だった過去の抑制分を持ち越す新ルールも適用され、本来0.6%引き上げるはずが0.1%に圧縮された。
 物価は1%上昇しており「実質的に減額」(仙台市の社会保険労務士)。21年度からは年金額改定の際に賃金変動との連動を強める。今は賃金が下がっても物価が上がった場合は年金額を据え置いているが、新たな仕組みでは減額となる。
 家計を切り詰める田川さん。公的年金だけでは老後資金が2000万円不足するとした金融庁審議会の報告書に、厳しい現実を突き付けられたように感じた。自分名義の貯金は約100万円。「葬式代ぐらいは残しておかないと…」と力なく笑う。
 報告書は「自助」を促すが、厚生労働省の16年国民生活基礎調査では高齢者世帯の15.1%が「貯蓄がない」と回答した。非正規雇用の広がりや退職金の減少、高齢者医療費の負担増が進む中、老後の不安定さは決して人ごとではない。
 夕暮れ時のスーパー。田川さんのお目当ては鮮魚や精肉の値引き品だ。「あといくらも生きられないから、本当はもっと食べたい物を食べたい。でも栄養が取れればいいじゃないか」。赤札の付いた鶏肉を手に自分に言い聞かせる。
(報道部・東野滋)


2019年07月18日木曜日


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