広域のニュース

<参院選東北>営みの中で/原発避難計画 難題が山積、遂行は困難

石巻市が避難計画で避難所受け付けステーションに指定した仙台市青葉区の青葉体育館。入り口が分かりづらく、避難者が戸惑うことも懸念される

<「国が作るべき」>
 「土地勘がないとカーナビがあっても分からない。石巻の人がたどり着くのは相当大変だろう」
 もし「本番」だったら−。石巻市の門間弘さん(66)は背筋が寒くなる。
 門間さんは石巻市の市民団体「女川原発の避難計画を考える会」に参加する。会は昨年9月、同市が2017年に公表した原発避難計画に基づき、仙台市青葉区の青葉体育館など避難所受け付けステーションへのルートを実際に車で走行してみた。
 「片側1車線の道ばかりで非常時は車があふれる」「この計画はほとんど遂行不能と実感した」。門間さんら会員が寄せた報告にはリアルな課題がずらりと並んだ。
 会の事務局を担う松浦健太郎弁護士(仙台弁護士会)は「何を信じてどう行動すればいいのか。実際の避難で混乱を強いられるのは私たちだ」と計画の実効性を疑問視する。
 東京電力福島第1原発事故を踏まえ、国は原発の半径30キロ圏内の自治体に広域避難計画の作成を義務付けた。宮城県内は女川原発が立地する石巻市、女川町のほか、美里町など周辺5市町が対象になった。圏域の人口は約21万に上る。
 自治体をまたぐ避難の渋滞問題。県外避難先の確保。広域避難特有の難題は山積し、自治体の手に余るものもある。「原発事故の影響は広範囲に及ぶ。避難計画は国が責任を持って作るべきだ」(30キロ圏内の自治体職員)との声が上がる。
 「原発は住民に不安を与え、自治体職員に多大な困難を押し付けている」。考える会代表の原伸雄さん(77)は憤りを隠さない。

<集落挙げて訓練>
 参院選での各党の訴えは、原発再稼働を容認する立場から原発ゼロまでと幅広い。エネルギー政策を巡る総論を前に、地域の課題はかすみがちだ。
 美里町小島行政区。女川原発の30キロ圏内にある29世帯の集落もまた、不安のただ中にある。避難経路の県道は片側1車線で道幅も狭い。街灯がなく夜間は真っ暗になる。
 「災害はいつやってくるか分からない。文句ばかりも言っていられない」。区長の安部栄喜さん(68)は避難計画への不満を胸にしまい、万が一に備える。
 避難訓練には集落を挙げて参加し、高齢者がどこでどういう生活をしているか念入りに情報交換している。問題点を検証し、必要があれば国に要望する。
 「避難計画の有効性は分からないが、区長として地域の安心、安全を最優先に考えていくしかない」
 結局、自分たちの命は自分たちで守るしかないのか。安部さんは厳しい現実を見据える。(石巻総局・樋渡慎弥、小牛田支局・山並太郎)
     


関連ページ: 広域 社会

2019年07月19日金曜日


先頭に戻る