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<参院選 その声届くか>農地維持/若返り困難 活動保てず

担い手不足が深刻化している栗原市の水田地帯。候補者名を連呼して選挙カーが走り去った

 宮城県加美町宮崎東部地区の高田ふる里保全会は2016年度限りで、国の「多面的機能支払交付金」を活用した地域ぐるみの環境保全活動をやめ、解散した。06年に前身の助成制度のモデル地区に選ばれた先進地だったが、高齢化で担い手が確保できなくなった。

<大半が70代後半>
 会長を務めていた高橋哲雄さん(76)は「誰も反対しなかった。全員が限界だった」と振り返る。
 同地区は鳴瀬川と田川の合流地に接する水田地帯。ホタルやカワセミ、希少種のギバチ(ナマズの仲間)などを呼び戻そうと、住民約25人、土地改良区、小学校などで会を設立した。
 11年目を迎えた16年、中心メンバーの大半は70代後半に差し掛かり、体力も気力も衰えた。比較的若い住民は共働きで忙しく、週末の活動は敬遠された。
 「制度自体は良かったと思うが、動ける人がいなければ活動は成り立たない。美しい地域を引き継ごうと思った子どもたちの姿が、今はもうない」。高橋さんは寂しげに語った。
 栗原市築館の黒瀬地域農地環境保全会は、07年度から助成制度を活用し、農地の草刈りなどに取り組んできた。12年間活動を続けたが、この春に組織を解散した。理由は煩雑な事務作業の担い手の不在だった。
 当初から事務を担当した佐藤繁美さん(66)は元栗原市職員。「地域のためにと引き受けた。1年だけのつもりが12年続いた」と語る。計画書や報告書など多いときは30ページにもなる書類作りに2、3日かかった。
 保全会には農家を中心に約60世帯が関わったが、事務を引き継ぐ若手は見つからなかった。

<課題はそのまま>
 栗原市では18年度、他にも10組織が解散。保全会と同様に、事務後継者の不在が主な理由だ。「専門知識と事務経験が必要となり、役所や農協の職員でないと難しい」(同市)という。
 生産者の高齢化や担い手不足を見据え、地域ぐるみで農地を維持、管理しようと、助成制度は始まった。その間、政権政党は移り変わったが、生産者の減少と所得低迷という農政の根本的な課題はそのまま残り、地域ばかりが年老いた。
 「もうからないコメ作りを続けたいと思うだろうか」。佐藤さんは、同居する役所勤めの次男(38)に後継話を切り出せずにいる。(栗原支局・門田一徳、加美支局・佐藤理史)

[多面的機能支払交付金]地域ぐるみで農地保全に取り組む組織に助成する。活動は農地の草刈り、植栽、生態系保全など。水田は10アール当たり3000円を基本に助成。農地・水・環境保全向上対策として2007年に始まり、14年に法制化された。県内では18年度、1011組織が助成を受けた。


2019年07月20日土曜日


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