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<まちかどエッセー・鈴木誠一>昼は図面、夜は譜面

[すずき・せいいちさん]鈴屋金物(株)代表取締役。1951年仙台市生まれ。早稲田大商学部卒・同大大学院商学研究科修士課程修了。早稲田大商議員、仙台稲門会副会長。仙台二高同窓会理事・創立120周年記念データベース委員長。ジャズバンド「ビバップス」主宰。

 20年ほど前のコンサートの話だ。開演前、愛用のテナーサックスをストラップで引っ掛ける金具が壊れ、楽器を床に落としてしまった。キーバランスが崩れて音が出ない。困った。開演まで1時間しかない!
 楽器店に駆け込むと、幸いにもセルマーのテナーが1台だけ在庫あり。貸してほしいとお願いするが丁重に断られる。「これ買います」。生まれて初の衝動買いで、わがジャズバンド「ビバップス」コンサートに何とか間に合った。
 「ああ、まだ吹いてなかった。音、出るかなー」。楽器がだんだんなじんでくる。低音部の響きがとても気持ちがいい。「タスカッター」
 金物屋の仕事は建築図面から、建築金物を拾い出して、積算することから始まる。図面には、建物の細かいディテールまで書いてある。ある意味で図面は、譜面に似ている。図面は建物の建築を立体的に描き出し、譜面はメロディー、リズムを導き、醸し出す。
 第7回定禅寺ストリートジャズフェスティバル(1997年)は、雨にたたられた。ビルの入り口、分離帯、広場などが舞台とあって、通り掛かりの人を音楽の輪に引き込む。市民と演奏者との一体感が大きな魅力。当時、全国紙の仙台支局長で大学の先輩が、偶然に通り掛かった。
 先輩は私を見つけ足を止めた。この縁でジャズに魅せられて、ビバップスでボーカルを始めた。翌年は、通行人側から聴いてもらう側に回った。
 出会いと別れは、人生の縮図と感じる。会うべき人には、ベストなタイミングで巡り合う。見物するお父さんに肩車され、喜々として音楽に合わせて踊り出す幼い子供を見るのはうれしい。演奏することが病みつきになる。
 私は昼は図面、夜は譜面に親しみ、イメージを膨らませている。市役所勤務のピアニスト、診療放射線技師のトロンボニスト、人生の終末を見守るドラマー、軽トラック運送業のドラマー、保育園経営のベーシスト、ガス会社社長のギタリスト、サンドイッチ店主のトランペッターらと今秋の、第1回から連続29回目のジャズフェスのステージに向かって練習に励む。
 昼は図面、夜は譜面。人生の豊かさを胸に。


2019年07月22日月曜日


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