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<聖火への願い 被災地から>復興の難しさ共有を 一般社団法人ふらむ名取代表理事・格井直光さん

語り部として「震災の教訓を伝えたい」と話す格井さん=宮城県名取市閖上

 <一般社団法人ふらむ名取代表理事格井直光さん(60)は宮城県名取市閖上にあった自宅が東日本大震災の津波で全壊し、同居していた両親が犠牲になった。古里の復興を支援する団体を設立し、語り部としても活動。東京五輪では、宮城県が独自に設けた「語り部枠」のボランティアに応募した>

 閖上の復興は遅れ、新たな住宅団地のコミュニティーづくりは緒に就いたばかり。人口が減り、災害公営住宅では1人暮らしの高齢者が大半。震災前の「隣近所」もバラバラだ。五輪をやるくらいなら、復興にもっと力を貸してほしかったと今でも思う。

◎風化防ぎたい

 ボランティアに応募したのは、一人でも多くの人に震災の教訓を伝え、風化を防ぎたいとの思いから。昔、閖上を襲った津波の経験が継承されず、多くの人が犠牲になった。今回はおそらく、自分が生きている間に日本で開催される最後の五輪。国内外の人々に、震災は「遠い国の出来事」ではないことを伝えたい。

 <語り部をするボランティアの応募者は約80人。宮城スタジアム(利府町)でのサッカー競技の開催期間を中心に、仙台空港やJR仙台駅などのブースで震災の記憶を伝える役割を担う>

◎準備まだまだ

 五輪で宮城に来た人に何をどう伝えるか、整理する必要がある。被災地で活動する語り部は多数いるが、自身の体験を中心に話す人、日常や社会で生かすべき教訓まで掘り下げて語る人などさまざま。海外の方を案内した経験から、写真や映像などで視覚に訴える工夫の重要性も感じる。ハード・ソフト両面で、まだまだ準備が必要だ。

 <閖上での語り部活動では、メンバーと分担し、修学旅行生ら年間200団体以上を案内している。ただ、人数は2014年ごろをピークに減少傾向だ>

 被災前後の写真などを見てもらい、現地を訪問してもらっている。かさ上げ後の風景や、8年を経ても空き地がある現実に驚く人は少なくない。その場でしか感じられないことがたくさんある。
 「復興五輪」を掲げるなら、選手や役員ら全ての大会関係者に東北の被災現場を見てほしい。もっと踏み込んで被災地の現状を考えてもらいたい。コミュニティーづくりなど現在の課題を含め、災害復興の難しさや教訓を伝えなければならない。いま一度、被災地に目を向けてもらい、私たちも教訓を再確認し、気持ちを引き締めることができる五輪であってほしい。
(報道部・菊池春子)

[かくい・なおみつ]1958年、宮城県名取市生まれ。東北学院大卒。2012年から住民団体「閖上震災を伝える会」で活動。11年10月から年5〜10回発行している無料の地域紙「閖上復興だより」の編集長も務める。防災士。長年、スポーツ用品販売会社に勤務した。


2019年07月25日木曜日


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