宮城のニュース

災害公営住宅の家賃増で子育て世代の退去相次ぐ 低所得向け「制度の限界」

高齢女性(手前)に体調などを尋ねる大山さん(中央)ら=仙台市太白区のあすと長町市営住宅

 子育て世代の退去が相次ぎ、残る高齢者はコミュニティーの維持に不安を募らせる−。収入超過世帯を巡る問題は、多様な事情を抱える被災者に対し、低所得者向けの公営住宅のルールで対応した「制度の限界」が背景にある。
 仙台市内の災害公営住宅の町内会長によると、5月に収入超過世帯の5人家族が退去した。「蓄えもないのに、11万円の家賃は払えない」。周囲には、子どもは数キロ離れた転居先から元の小学校にバスで通うと漏らしていたという。
 他にも4月以降に多賀城市で5世帯、松島町で1世帯が早くも退去した。
 仙台市太白区のあすと長町市営住宅では女性10人が「見守り隊」を結成し、月2回、高齢単身の約50世帯を巡回する。大山葉子さん(71)は「隊員のうち9人は70代で『老老介護』のよう。若い世代が退去し、高齢者だけが取り残されれば見守りは難しくなる」と不安を口にする。
 公営住宅はそもそも低所得世帯向けで、被災した子育て世代や共働き世帯の活用を想定していない。一部自治体は独自の家賃減免策を講じたものの、当面の「人口流出防止策」の側面が強い。減免期間が終われば、再び支援にばらつきが生じる可能性がある。
 「欠陥」を補うため、宮城県には統一した支援策を示すなどリーダーシップが求められたが、「やる気がなかった」(沿岸自治体の担当者)という。
 自身も災害公営住宅に暮らす宮城野区の鶴ケ谷6丁目中央町内会長の松谷幸男さん(66)は「首長の姿勢によって被災者に格差が生じていいのか。公営住宅のルールに被災者を当てはめることにそもそも無理があった」と指摘。被災者が入居を継続できる新たな法整備を訴える。(報道部・高橋鉄男)


2019年07月26日金曜日


先頭に戻る