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相馬野馬追あす開幕 昨春浪江に帰還の11歳少女が古里思い初陣

野馬追の陣羽織の着心地を確かめる琉美子さん(左)。右は母麻由美さん

 国の重要無形民俗文化財「相馬野馬追」が27〜29日、南相馬市原町区の雲雀ケ原祭場地を主会場に開かれる。参加予定の401騎の騎馬武者が行列などで勇壮な戦国絵巻を繰り広げる。
 27日は旧相馬藩内の五つの郷からそれぞれ出陣。午後2時から雲雀ケ原で宵乗り競馬がある。
 本祭りの28日は午前9時半から騎馬武者が原町区中心部を雲雀ケ原まで行進。正午から甲冑(かっちゅう)競馬、午後1時から神旗争奪戦を行う。
 29日は市小高区の小高神社で午前9時から、裸馬を素手で捕らえて神前に奉納する「野馬懸(のまかけ)」がある。

◎5月からの練習「楽しい」

 27日開幕する相馬地方の伝統行事「相馬野馬追」に、福島県浪江町のなみえ創成小6年紺野琉美子(るみこ)さん(11)が騎馬隊で初出場する。東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示の一部解除を受け昨春、家族と帰町した。当日は中心部を行列する馬上から古里を眺める。「なかなか言うことを聞かない」という馬と初陣に臨む。
(南相馬支局・佐藤英博)

 祖父に勧められ、出場を決断した琉美子さん。5月から騎乗練習を始めた。「馬? 楽しいです。でも結構わがまま。うまく進んでくれなかったり。なめられてます」と笑う。
 学校の先生たちが一番楽しみにしているという。「あまり自分に注目しないでほしい。乗り手が緊張すると馬が大変になるから」
 3歳半の時、東日本大震災を町内の自宅で経験した。すごい揺れ。物がたくさん落ちてきたのを覚えている。2階のベランダで待つと、祖母が迎えに来た。車に乗って走り始めたところで、記憶は途絶えた。津波はすぐ近くまで来ていた。
 原発事故による全町避難で10カ所以上転々とし、千葉県の小学校に入学した夏、父の仕事の関係でタイの首都バンコクへ。4年生までの3年半を日本人学校で過ごした。
 昨春のなみえ創成小開校を機に、父を現地に残して一足先に母や妹と町に戻った。5年生の時は琉美子さん1人。6年生になって級友が1人増えた。
 「学校の人数は多くても少なくても、あまり気にしない。だけど町の家々が取り壊され、どんどん減っているのは寂しい」
 町の避難指示が一部で解除されたのは2017年春。2年以上たち、町内に居住するのは約1000人。震災前の2万1400人に遠く及ばない。
 それでも相馬藩に五つあった「郷(ごう)」のうち浪江、同県大熊、双葉3町を束ねる「標葉(しねは)郷」は昨夏、8年ぶりに浪江に本陣が立つなど明るさを取り戻しつつある。
 琉美子さんは27日朝に浪江本陣を出陣し、騎馬行列で町中を行進。28日の本祭りでは南相馬市原町区の中心部での行列にも加わる。
 母の麻由美さん(44)は「琉美ちゃんは浪江に戻ってからいろいろ前向きで、安心して見ていられる」と目を細める。
 野馬追には、琉美子さんが「前のように大きい声では言えなくなったけど、大好き」と言う父も、タイから一時帰国する予定だ。


2019年07月26日金曜日


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