岩手のニュース

<Eスコープ>事業承継に官民本腰「被災地経済再生に貢献」

支援センターの仲介で盛岡市の老舗精肉店を引き継いだ竹林さん

 企業経営者の平均年齢が全国で最も高い岩手県で、官民が第三者への事業承継に本腰を入れている。盛岡市民に愛され続ける老舗精肉店は「県事業引継ぎ支援センター」の仲介でのれんを守った。岩手銀行も数値目標を掲げて取り組みを強化し、事業からの撤退が相次ぐ東日本大震災の被災地の経済立て直しを進める。(盛岡総局・江川史織)

<高齢化全国一>
 帝国データバンクによると、岩手県内企業経営者の2018年の平均年齢は61.7歳で高齢化全国一。盛岡市肴町で1960年創業の「平船精肉店」を切り盛りしてきた平船繁さん(82)は、事業承継に悩みを抱えていた。
 店頭販売のローストチキンが名物で年間10万本を売り上げる地元の有名店ながら、周囲に後継者は見当たらない。「閉店したら常連客に申し訳ない」と支援センターに事業承継の仲介を依頼した。
 平船さんが示した条件は「屋号を残す」「ローストチキンの味を守る」「従業員2人を引き続き雇用する」の三つ。支援センターが起業志望登録リストの中から選抜したのは、人材派遣会社に勤務する竹林誠さん(41)だった。

<中立の立場で>
 竹林さんには中小企業診断士、元銀行員など専門知識を有する職員が、資金調達のあっせんや事業計画書の書き方を指導。両者のマッチングや譲渡価格などの契約内容を精査して2017年6月、事業譲渡にこぎ着けた。
 竹林さんは「不利益にならないよう中立の立場で相談に応じてくれて頼もしかった」と仲立ちに感謝する。平船さんも「無料で相談に乗ってくれるし、職員のフットワークも軽い」と支援センターの利点を強調。2年がかりで竹林さんに秘伝の製法を伝え終えると今年5月、完全に引退した。
 支援センターは、中小企業庁が商工会議所に業務委託するなどして全都道府県に設置した。岩手では15年度の開設から18年度までの4年間に約340件の相談を受理している。
 ただ、問い合わせの内実は「人手不足に悩む東京の経営者が、人材を譲ってほしいと相談に訪れるケースも少なくない」(岩手支援センター)と打ち明ける。
<重点的に支援>
 看過すれば地元の企業経済が先細る事態に危機感を抱く岩手銀は、中期計画(19〜22年度)で事業承継を重点支援する方針を策定した。県内で今後4カ年に2400件の事業承継を進める。
 「震災被災地の企業は、経営者の高齢化に加えて経営の悪化が廃業に拍車を掛けている」(帝国データバンク盛岡支店)。18年の休廃業・解散増加率(前年比)は東北6県平均が2%だったのに対し、岩手県は22%と飛び抜けて高かった。
 岩手銀は「地域に張り巡らせたネットワークを生かし、きめ細かいマッチングで被災地の経済再生に貢献したい」と意気込む。


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2019年07月27日土曜日


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