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<仙台いやすこ歩き>(104)ホヤ/旬のうま味 産地で堪能

 海の香りに誘われて、またまたやってきた塩釜市。「何といっても夏はホヤ」、片や「ホヤはちょっと苦手」という2人が向かったのは、JR仙石線本塩釜駅から5分の場所にある「ほやほや屋」だ。
 国道45号沿いに見つけた「ほやし中華 はじめました」ののぼりに、何だか楽しくなってくる。待っていてくれたのは佐藤文行(ふみゆき)さん(59)で、頂いた名刺の裏には「ほやの可能性を食べる店=ほやほや屋」の一文、肩書は株式会社涛煌(とうこ)代表取締役となっている。
 「実は私はかまぼこ屋なんです」といって、佐藤さんは開店の経緯を話してくれた。2年半前、宮城県漁協の人たちが、創業50年のかまぼこ会社を営む佐藤さんを訪ねてきた。当時は、東日本大震災後に販路を失い、ホヤが廃棄されていたピークの頃。その量はむき身で7700トンに上った。ホヤを何とか生かせないかとの相談で、佐藤さんも練り物加工に挑戦することになった。「でも、うまくいかなかったんですよ」
 模索が始まり、消費拡大のために「ホヤは生食」の考えにとらわれない食べ方を提案していこうと、漁師、加工業者をはじめとする仲間の協力の下「ほやほや屋」を1年半前に開いた。
 佐藤さんの考え方は至ってシンプルだ。出荷まで3年かかる養殖ホヤ。せっかく出荷しても廃棄される。来年末で震災後の補償も終わる中、どうするか。「地元で食べればいい」というわけだ。
 より多くの人に食べてもらうために、一番おいしくなる時期の収穫を基本とした。「梅雨ボヤが肉も付き、匂いやえぐみも出ない時期なんです。これだけを収穫して冷凍し、一年中食べられるようにしました」。そうして料理人が腕をふるって作るのがほや塩ラーメン、ほや塩チャーハン、ほや唐揚げなどなど。
 「ほや唐揚げは短冊に切り片栗粉をまぶし揚げるだけ。ホヤが持っている天然ミネラルがあるので味付けは要りません」。佐藤さんの言葉はホヤ愛にあふれている。一度冷凍して解凍したから唐揚げや天ぷらが可能になったので、生のままでは油跳ねが大変だとか。
 料理の手本はカキにあった。「カキも生は苦手でも、フライは好きという人がいますから。ホヤをアヒージョにするとワインに合うんです」とにっこり。「今は東京や大阪で『ほやしゃぶを食べる会』を開き、ファンを増やしています」。今年は昨年の6倍の量のホヤを使って、さらに消費の仕組みづくりに奔走中。
 いよいよ料理が登場だ。ほや飯は海の香りも優しく、ほやチャンジャを載せれば「う〜ん、合うね」。そして、ほや唐揚げのうまいこと! 甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の五味を全部持つ唯一の食材というが、全てうま味となって凝縮されている感じだ。「食べられるどころじゃない、お代わりしたい」と画伯。
 小さなお店はいつの間にかいっぱいになり、隣に相席した仙台の会社員の人も「実はホヤは苦手なんですが、塩釜に行くんだったら食べてみてと、奥さんに言われて来ました。いやー、めっちゃおいしいです」と話してくれる。この日、このテーブルだけで2人がホヤデビューだ。

◎栄養豊富認知症予防にも

 ホヤは、脊椎動物に近い原索動物の一種。地球上でホヤの仲間は約3000種が知られているそうだが、宮城が生産量全国一なのがマボヤ。卵からかえったばかりの幼生はオタマジャクシ形をしていて、2週間泳いで気に入った場所に定着し、ついのすみかとする。
 春、水温が上がるとともに海が活性化。ホヤはプランクトンを食べて肉付きを増し、6月ごろ旬を迎える。7月、水温が30度を超える日が数日続くと、ホヤは夏バテし何も食べなくなる。食べていないため内臓が空っぽとなり、匂いやえぐみもないこの頃のホヤが、梅雨ボヤと呼ばれる。
 栄養素は豊富。コレステロールを抑制し肝臓の働きを助けるタウリン、消化吸収や疲労回復に効くグリコーゲン、体の機能の維持や調節に欠かせないミネラル類などだ。体内の酸素を運ぶために欠かせない鉄分と新陳代謝に必要な亜鉛が、共に多く含まれていることも特筆される。最近では認知症予防・改善の効能も認められているそうだ。
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 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2019年07月29日月曜日


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