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<まちかどエッセー・中村匠子>財布をなくした!

[なかむら・しょうこさん]1957年、岩手県住田町生まれ。国立仙台病院(現仙台医療センター)付属看護助産学校を卒業。病院勤務後に子育てのため退職し、塩釜子ども劇場と出合う。2004年、NPO法人みやぎ県子ども・おやこ劇場設立時に専務理事となり、16年から代表理事。

 先日、一関市に住む妹とお中元の買い物をした。毎年お中元とお歳暮は、仙台のデパートに行く。時には東京にいる姉も交じることもあり十数年続いている。
 私は4人姉妹で、17年前にもう一人の妹ががんのため40歳で亡くなった。その時、私自身にも、いつ、何が起こるかわからないと不安になった。以来、姉妹で会う機会が増え、岩手の実家で1人暮らししている母との連絡も増えた。
 さて、買い物の後、昼食とティータイムを過ごしタクシーで仙台駅に着いた時、妹が「去年のお歳暮を思い出すね」と言った。そうだった! あの事件は、同じようにタクシーの乗車料金を払って降りた後、起きたのだった。
 やけにバッグが軽いな。中を確認したら財布がない! まだ停車しているタクシーの車内や降りた周辺を探しても見つからない。財布にはキャッシュカードやクレジットカード、下ろしたばかりの現金が入っている。見つからなかったらどうしようとドキドキが止まらない。
 慌てふためいて駅の交番に駆け込み「財布をなくしました。届いていませんか?」と言うと「名前は? 財布の色は? お金はいくら?」と警察の方の冷静な対応。「中村匠子。黒の長財布! 7万円ちょっと」と答えて、ふとテーブルを見ると財布が置いてある。
 「あっ、これです!」と安堵(あんど)し大喜びする私。隣のテーブルで書類を書いている若いカップルが見つけてくれたのだ。「財布がそのまま戻ってくるのは、めったにないですよ。感謝しなさい」と警察の方に言われた。言われなくても感謝、感激だ。お礼を述べ、謝礼を手渡して別れた。
 動揺していたので名前も聞かずじまいだったが、あのカップルはどうしているかなあ。あなたたちのおかげで「財布をなくしたことがあったね」と笑って話せますよ、本当にありがとう。
 暗いニュースが多い昨今だが、こんな若者との出会いもある。これから先、どれぐらい元気で過ごせるか分からないが、さまざまな出会いを糧に精いっぱい過ごしていきたい。
(みやぎ県子ども・おやこ劇場代表理事)


2019年07月29日月曜日


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