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<災害援護資金>借り主死亡後の回収に苦慮 市町村、相続人特定や連絡で忙殺

 東日本大震災の被災者に国などが市町村を通じて貸し付ける災害援護資金を巡り、借り主が死亡した場合の対応に市町村が頭を痛めている。未返済金について災害弔慰金支給法は「免除できる」と規定しているが、国は民法に準じて第3順位の遺産相続人まで請求するよう指導。市町村は相続人の割り出しや連絡に忙殺されている。(石巻総局・氏家清志)

 「離婚や再婚によって借り主に一度も会ったことがない相続人もいる。支払納付書の送付や延滞者への督促など通常業務で手いっぱい」

<放棄なら「次」>
 石巻市の担当者は悲痛な声を上げる。5月末現在、同市は3057件を貸し付けた。約170人の借り主が死亡し、約30件の相続放棄手続きに着手した。
 作業は膨大だ。借り主の誕生から死亡まで、連続した戸籍謄本を該当自治体に請求して相続人の範囲を確認。未返済金があることを連絡し、場合によって相続放棄の手段を伝える。放棄されれば次の順位の相続人全員を調べ、連絡する。
 相続は民法の規定により、第3順位の兄弟まで続く。兄弟が死亡していた場合はおいやめいが代襲相続する。相続人が十数人に上ったり、「なぜ、請求するんだ」と疑問視されたりした自治体もあるという。
 約1万5000件を貸し付ける仙台市は3月末時点で、借り主約800人が死亡。うち約100件の相続放棄手続きが終了した。市災害援護資金課の担当者は「永遠に追っていく感覚だ」と漏らす。

<免除可と規定>
 災害弔慰金支給法13条は災害援護資金に関し、借り主が死亡した場合などに、市町村は債務の全額か一部を免除できると規定している。市町村が免除した債務は国と都道府県も免除できると定めているものの、実際は借り主が死亡した時点で免除せず、相続人に返済を求めている。
 内閣府の担当者は「『免除できる』と書いてあるが『しなければならない』とは書いていない。貸し手が自治体というだけで金銭貸借契約。民法に準じて相続人に資産があれば返してもらう」と説明する。
 同資金の問題に詳しい仙台弁護士会の佐藤靖祥(よしひろ)弁護士は「相続放棄で免除になるのは当然で、それでは13条の規定の意味がない」と指摘。「同居していた配偶者や子どもならまだしも兄弟以上は免除にするなど、判断は市町村の裁量に委ねるべきだ」と強調する。

[災害援護資金]自宅が半壊以上の被害を受けるなどした世帯に、市町村が生活資金350万円を上限に貸し付ける制度。原資は国が3分の2、都道府県が残りを負担する。返済金は市町村が回収し、県、国に償還する。返済期間は13年。うち猶予期間が6〜8年ある。東日本大震災では連帯保証人を立てられないケースにも対応し、東北4県など9都県で計2万9603件(1月末時点)が貸し付けられた。うち宮城が約8割を占める。


2019年07月30日火曜日


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