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仙台の郵便局でパワハラ? 相談も成果なく退職

 「今の時代に、大企業でもこの対応なのかと思うとがっかりした」。仙台市内に住む元郵便局社員の女性(49)から、落胆の声が「読者とともに 特別報道室」に届いた。市内の郵便局で特定の上司からパワハラを受けた。社内の人事部門に相談しても解決されず、やむを得ず退職したという。
 女性は今年3月、郵便局の期間雇用社員として採用された。健康診断の結果を巡り、郵便局側が勝手に医療機関に開示を迫ったことが発端となり上司との関係が悪化。ことあるごとに厳しい言葉を浴びせられたという。
 「せっかく雇用して、それなりにこっちだってコストかかってるんだから」。女性の録音記録には上司のこんな言葉が残る。
 明確な説明もなく休日希望の変更を求められたり、家庭の事情による早退の希望を却下されたりしたこともあった。
 女性は4月末、パワハラを理由に退職届を上司に提出。「そんなもの受け取れるか」と怒鳴られ、協議の末「退職願」とすることで受理された。5月中旬には、適応障害とストレス性胃炎と診断された。
 会社の人事部門に相談し、社内調査も行われた。退職直前の5月末、結果を知るため担当者に電話すると驚きの言葉が返ってきた。
 「既に人事部門の手は離れたので、こちらに聞かれても困る。後は上司と直接やりとりしてほしい」
 がくぜんとした。被害者の自分が加害者本人に聞けるはずがない。最終的に、調査でパワハラは認められなかったという。
 女性は「大きな企業ほど守り合って逃げるんだと、ばかばかしくなった。仕事も職場の仲間も好きだったのに」と振り返る。
 一連のやりとりについて、日本郵便東北支社(仙台市)は取材に「相談があったかどうかを含め、社内の問題なので教えることはできない」と回答した。
(鈴木悠太)

◎社内での解決困難 専門家「労組や弁護士頼って」

 2018年度に厚生労働省や全国の労働局に寄せられた民事上の労働相談で、パワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」の数が過去最多の約8万2800件となるなど被害は増加の一途をたどっている。件数の推移はグラフの通り。全体の数値がそろう17年度までの10年間で、全国、東北各県ともに倍前後に増えた。
 19年5月に対策を企業に義務付ける女性活躍・ハラスメント規制法が成立したが、実効性の確保には疑問符が付く。
 年間約3000件の労働相談を受ける東京のNPO法人POSSE(ポッセ)仙台支部の森進生代表は「パワハラを社内で相談して解決したケースは聞いたことがない」と言う。
 森代表によると、大企業ほど上司を守る意識が強く、非正規など立場の弱い人の訴えが無きものにされる傾向にある。同僚が被害に遭っても自分が標的にならないよう、無視したり相談に乗らなかったりする組織的なハラスメントも散見されるという。
 「相談先であるはずの労働組合委員長が加害者本人だったという悲惨な事例もある」と森代表は明かす。
 パワハラを立証するには、高い壁がある。
 ブラック企業対策仙台弁護団事務局長の太田伸二弁護士(仙台弁護士会)は「恒常的に被害を受けても、証拠を残す意識はまだ低い。録音データがあってようやく法的な土俵で闘いやすくなる」と話す。
 本人や同僚の証言、被害の詳しい記述も証拠になり得る。日時や内容を客観的に示せる録音記録が立証のための手段として最も有効という。
 太田弁護士は「まずは社内の労働組合などを頼るべきだ。解決が難しい場合は労働問題に詳しい弁護士に相談してほしい」と呼び掛ける。

[女性活躍・ハラスメント規制法](1)優越的な関係を背景に(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により(3)就業環境を害する−の三つをパワハラの要件とし「行ってはならない」と明記。相談体制の整備など防止対策を事業主に義務付けた。罰則規定はない。大企業は2020年4月施行予定。中小企業は同時期に努力義務としてスタートし、以後2年以内に義務付けられる見通し。


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2019年08月04日日曜日


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