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<ニュース深掘り>離脱側も問われる手腕 5農協合併「新みやぎ」発足 

テープカットをして新みやぎ農協の出発を祝う関係者。今後の運営が問われる=7月1日、宮城県栗原市

 宮城県北5農協が7月1日に合併して、「新みやぎ農協」(栗原市)が誕生した。2017年7月、8農協がテーブルに着いた協議は3農協が離脱する難産だった。担い手の減少や信用事業の減収などを背景に、秋田県はじめ各地で農協再編の議論が活発化している。新みやぎ農協と、合併しなかった3農協の動向は引き続き注目を集めそうだ。

 新みやぎ農協の発足に向けて、河北新報社では旧5農協を担当する県内6支局と本社報道部の記者が取材に当たり、合併の動きを連載などで報じた。
 一連の取材で印象的だったのは、各農協の幹部や専門家の「リスク」の捉え方だ。
 合併した旧農協の幹部は、合併しないことによる将来のリスクを強調した。全国の農協から貯金を集める農林中央金庫(東京)の運用益は減少が続く。
 「足元の明るいうちに先手を打つ」ことで、スケールを生かした販売・資材調達、役員の削減、組織の統廃合など将来のリスクを抑える選択肢が増えると判断した。
 一方、合併協議から離脱した農協が重視したのは、合併した場合の資金と経営のリスクだった。農協の利益を蓄えた内部留保は、8農協でばらつきがあった。潤沢な農協がある一方、規模の割に持ち合わせの少ない農協もあった。
 内部留保の多寡は、経営力の差を示す側面もある。潤沢な農協は、苦しい農協の救済に使われることを懸念。各農協の経営力の差にも疑問を感じ、「自力で運営したほうが将来のリスクは少ない」と判断した。
 宮城大の川村保教授(食料経済学)は、今回の合併で生じる離脱農協の経営規模のリスクを指摘した。合併農協は規模の面で販売力が強化される。一方、離脱農協は規模がそのままなので相対的に合併農協よりも販売力が下がる。
 そのため消費者や卸業者などと直接取引する独自販売がより重要になり、「しっかりとした売り先がないとますます経営が厳しくなる」と予測する。

 今回の合併はリスクの捉え方によって各農協の判断が分かれたが、協議に加わったどの農協も、将来を見据えて新たな事業やアイデアが一層求められる状況になったとも言える。
 新みやぎ農協は8月から、調達コストを抑えたハクサイ用肥料を合併前価格の1割引きで販売する。他の肥料、農業用資材でも値下げを展開する計画という。
 大坪輝夫組合長は合併からの1カ月を、「各方面にあいさつに行って分かったが、良くも悪くも注目されている」と振り返る。
 取材では、総代会の内容や組合員の配当など離脱3農協に対する関心も高かった。次の一手は何か。各農協の運営手腕が試される状況は続く。
(栗原支局・門田一徳)

[新みやぎ農協]2017年7月に宮城県北8農協が合併推進協議会を設立。いしのまき(石巻市)加美よつば(色麻町)古川(大崎市)の3農協が相次いで合併協を離脱し、4月1日の合併期日を3カ月延期した。旧5農協を合わせた18年度末の正組合員数は3万6709人、貯金残高3337億円、農畜産物販売高314億円。販売エリアは県内12市町村に及ぶ。


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2019年08月05日月曜日


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