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旧庁舎で何が 岩手・大槌町、震災記録誌やっと発行

記録誌発行に先立ち、震災当時の状況を説明する平野町長
大槌町が発行する震災記録誌「生きる証」

 東日本大震災の津波で大きな被害を受けた岩手県大槌町の震災記録誌「生きる証」が5日、発行される。多数の職員が犠牲になった旧役場庁舎周辺で何が起きたのか、生き残った職員らの証言を集めた。編集を巡るトラブルや旧庁舎解体の是非で町を二分する論争が続いた結果、岩手県内の沿岸12市町村で最も遅い発行となった。

 記録誌はA4判255ページで全11章。地区別の被害やボランティアの活躍、復興の歩みを紹介した。大槌高の生徒が「町で生きていく意味」を町民に取材して考察した章もある。
 当時の町長や町職員計39人のうち28人が亡くなった旧庁舎周辺の出来事は、独立した章を設けて掲載。犠牲になった職員のうち22人が実名で登場する。地震発生から津波襲来までの約40分間について職員や町民約45人の証言を集めた。
 建物の倒壊を恐れて庁舎前に災害対策本部を設置した経緯や職員一人一人の行動、津波から逃れる避難行動を時系列でつづった。
 震災の際に大槌町は県内の沿岸市町村で唯一避難指示を出さず、町民1286人が亡くなった。全町民に占める犠牲者の割合は県内最悪の8.0%となった。
 記録誌に町長がリーダーシップを発揮した場面はなく、総務課長が指揮を執っていたことが読み取れる。
 当時、総務課の防災担当主幹だった平野公三町長は「町長から具体的な指示を受けた記憶はない。私が町長の今なら、いろいろと指示する。あの時、きちんと提言できなかった私にも責任はある」と話す。
 町によると、遺族からは「当日の様子が分かって良かった」など好意的な評価が寄せられているという。
 記録誌は送料別の1500円で販売する。連絡先は町文化交流センター0193(27)5181。

◎遺族や元職員から検証方法疑問の声も

 発行される震災記録誌を大槌町は「教訓と反省を伝承する一助にしてほしい」としているが、一部の職員遺族や当時の町職員からは「検証が不十分」との声も聞かれる。
 60代の職員遺族は、記録誌の記述について「亡くなった原因や雇用者である町の責任が明確に示されていない」と批判。「この内容では後世へ教訓は伝わらない」と断じた。
 震災当時に現役だった元町職員も「町長や副町長を含めた災害対策本部の動き、生き残った職員がどこで何をしていたのかが解明できていないのではないか」と疑問視する。
 その上で「きちんと検証するには身内では駄目。第三者を入れなければならない」と指摘した。
 多くの町職員が犠牲になった旧役場庁舎について町民の中には「震災対応の検証が済むまで保存すべきだ」との意見があり、住民監査請求や住民訴訟に発展。町は「建物を目にしたくないという町民に寄り添う」として解体を推し進めた。


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2019年08月05日月曜日


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