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原発賠償 迫る「時効10年」 自治体、国へ延長要求検討

南相馬市が作成したパンフレット(左)と被災者宛ての案内文。市は待ちの姿勢を転換させる

 東京電力福島第1原発事故に伴い生じた損害賠償請求権が、事故から10年となる2021年3月を境に順次時効を迎える。さまざまな事情で請求権を行使していない被害者は多く、関係自治体は「このままでは多くの人が救済されない」と懸念。時効延長を求める動きも出ている。(福島総局・斉藤隼人)

 東電によると(1)全く請求していない(2)当面の生活資金とされる仮払金のみ請求し本賠償を受け取っていない−などの未請求者は6月末現在で計815人。賠償分野は多岐にわたり、一度支払いを受けた人も別の損害で請求できることがあるため、請求権を持つ被害者はさらに増える。
 事故当時の人口が約7万だった南相馬市では、昨秋時点で419人が未請求だった。病気や高齢のため請求が困難なケースがあるほか「仮払金を受け取った後に正式な賠償を請求できるとは思わなかった」と話す被害者もいたという。
 市被災者支援課長補佐の金子宰慶(ただちか)弁護士は「後から枠組みができた賠償ほど周知が行き届かず、請求可能だと知られていない」と指摘。市は本年度、被害者からの相談を待つ従来の態勢を見直し、戸別訪問するなど積極的なアプローチを図る。
 賠償の分野別では、自宅の購入や修繕、解体費用などを対象とする「住居確保損害」が今後の生活再建や帰還意欲に密接に関わるとみられる。
 2017年3月に避難指示が一部解除された福島県浪江町の鈴木清水賠償支援係長は「これから帰還しようとする人が(時効で)賠償請求できない事態になってはならない」と強調。町内に居住しているのは約1000人と事故前の5%にとどまり「他の被災自治体と連携し、時効延長を国に求めたい」と語る。
 原発事故の損害賠償を巡っては、各自治体や福島県弁護士会が相談窓口を設けている。同弁護士会の連絡先は024(533)7770。

[東京電力福島第1原発事故の損害賠償請求権]2013年12月成立の特例法で時効が民法上の3年から10年に延長された。「損害を知った時」から計算するため、時効の成立時期は損害の内容や個別事情によって異なる。事故後しばらくたって健康被害が出た場合などを想定し、請求権が消滅する除斥期間も「事故から20年」が「損害が生じてから20年」に変更されている。


2019年08月05日月曜日


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