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伝承の役割期待の一方で…震災遺構維持費に不安 沿岸市町村が持続可能な運営模索

被災当時の様子を伝える旧気仙沼向洋高校舎=3月10日

 東日本大震災の惨禍や教訓を伝える震災遺構が沿岸の市町村に次々と整備されている。修学旅行生や外国人の来訪も多く、風化が懸念される中で期待される役割は大きい。課題は国の財政支援がない維持管理費の確保だ。各市町村は入館料や寄付金を頼りに持続可能な運営を模索している。(報道部・鈴木拓也、高木大毅)

◎市が不足分賄う

 校舎4階まで津波に襲われた気仙沼市の旧気仙沼向洋高校舎の一般公開が3月10日に始まり、5カ月が過ぎた。
 年間収入の大きな柱は入館料だ。一般600円、高校生400円、小中学生300円に設定。7月末現在の来館者は4万3149人で、年間目標7万5000人の57.5%と出足は順調だ。
 来館者が目標に達しても、収支は約5600万円の支出見込み額に対し約1500万円の赤字。不足分は市の一般財源で賄うことになる。
 市震災復興・企画課は「伝承という使命を果たすには一定の費用がかかる。過度な負担にならないように収入増加策も考えたい」と理解を求める。

◎ふるさと納税も

 震災遺構を巡っては復興庁が2013年11月、復興交付金で整備できるのは各市町村1カ所までとする方針を公表した。保存に必要な初期費用は支援対象としたが、維持管理費は対象から外れたため、当時から被災自治体の負担増を心配する声が上がっていた。
 各自治体で運営費確保の手法は分かれる。仙台市は「多くの人に見てもらいたい」と、若林区の遺構「荒浜小」を17年4月から無料で公開する。人件費を含む昨年度の維持管理費は約2000万円。主に復興基金を活用し、一部はふるさと納税の寄付金を充てる。
 宮古市も遺構「たろう観光ホテル」の維持管理にふるさと納税を活用し、3月末現在で約4750万円を基金に積み立てた。電気代などの維持管理費約30万円(昨年度)に充てるほか、いずれ必要になる建物補修にも使う予定だ。
 石巻市の旧門脇小や旧大川小、宮城県山元町の旧中浜小などでも遺構整備が予定されるが、入館料の有無など運営方法は未定だ。

◎来訪者増 工夫を

 過去の災害で整備された遺構施設を見ると、入館料の先細りが懸念される。阪神大震災の断層を展示する野島断層保存館(兵庫県淡路市)は開館した1998年度は約283万人が訪れたが、昨年度は約13万人にとどまった。
 東北大災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授(災害伝承学)は「維持コストが高い場合、修学旅行生や外国人といった外からの来訪者を増やす工夫が必要だ」と指摘する。
 新潟県中越地震の被災地では地域住民らが会員制で運営する小規模の施設もあり、「いかに上手に維持管理するのか、戦略を選択する時期に差し掛かっている。被災地の責務として、ある程度の赤字を覚悟するのも一つの考え方かもしれない」と語る。

[震災遺構]東日本大震災や東京電力福島第1原発事故の惨禍を伝える被災建物など。河北新報社が3月に岩手、宮城、福島3県を対象に調べた結果、民間施設も含め少なくとも24市町村で38件の遺構が残されていた。建築物以外に黒板や時計などもある。


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2019年08月15日木曜日


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