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抵抗の神学者に迫る 反ナチ・ボンヘッファーの生涯1冊に

「精神的な支柱になる思想を提示したかった」と語る宮田さん=仙台市青葉区
宮田さんが刊行した「ボンヘッファー」

◎東北大名誉教授 宮田光雄さん

 東北大名誉教授の宮田光雄さん(91)=ドイツ政治思想史=が、ナチス・ドイツに抵抗して処刑された神学者ディートリヒ・ボンヘッファー(1906〜45年)の生涯と思想をまとめた「ボンヘッファー」(岩波現代文庫)を刊行した。ナチズムの成立と抵抗者の思想を研究してきた宮田さんは「戦争への懸念が高まる現代、精神的な柱になる平和への思想を提示したかった」と狙いを語る。

 ボンヘッファーは30年代、世界の教会指導者による会議で軍拡競争の阻止や兵役の拒否を訴えて注目された。ヒトラー政権転覆を目指したドイツ国防軍の一派に協力した後、逮捕され、45年に処刑された。獄中でも平等の精神を貫く姿勢に心酔した看守らが詩や書簡の保存に協力し、「抵抗の神学者」として有名になった。
 宮田さんは戦後に公開された書簡などから政教分離、非武装の世界を追求する平和主義、良心に基づく抵抗といった思想の根幹を解説。「ボンヘッファーは、軍事政権下の韓国の民主化闘争、ラテンアメリカの解放の神学、南アフリカのアパルトヘイト政策への反対運動に影響を与えた。中国の民主活動家でノーベル平和賞を受賞した故劉暁波氏が書簡集を愛読した」と紹介する。
 高知県出身の宮田さんは63年から東北大教授を務め、92年に退官。24万部のロングセラーとなった「きみたちと現代」(岩波ジュニア新書)、10万部の「非武装国民抵抗の思想」(岩波新書)など80冊以上を出版し、戦後民主主義思想をけん引した。
 72年から25年間、仙台市青葉区の自宅の隣で「一麦学寮」を運営し、学生たちと寝食を共にしながら聖書研究会や読書会を主宰。寮だった建物の壁には、若きボンヘッファーが牧師仲間と共同生活した寄宿舎の名にあやかり、「ブルーダーハウス(ドイツ語で兄弟の家)」の文字が今も刻まれている。
 「極限状況に置かれたボンヘッファーが生み出した普遍的な精神を受け継いでほしい」と願う。


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2019年08月15日木曜日


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