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強制不妊一時金の申請個別通知 山形県の個人情報扱い不明確 市町村は提供に慎重姿勢

個人情報保護条例に基づいて開かれた山形市の審議会。情報提供を求める県への厳しい指摘が相次いだ

 旧優生保護法(1948〜96年)下で強制不妊手術を受けた被害者への一時金の申請手続きを個別に説明する方針を示した山形県が個人情報の壁に直面している。県は市町村に支給対象者の情報を求めているが、具体的にどう使うのかが明確でないため、提供に二の足を踏む自治体が少なくない。多くの被害者に一時金を届けたいという県の意欲が空回りしている。
(山形総局・吉川ルノ)

◎趣旨には賛同

 「どう使われるか分からないまま、情報をフリーハンドで渡すのは危険だ」「被害者救済の趣旨には賛同するが、県は個人情報を軽々しく見ていないか」
 山形市が7日、市個人情報保護条例に基づいて開いた審議会。有識者ら委員から、県に対する厳しい指摘が相次いだ。
 会合は、県から提供を要請された情報の中に心身の障害に関する「要配慮情報」が含まれるため、委員の見解を聞くのが目的。支給対象者への個別説明の手段や誰が伝えに出向くかが県から示されないことから、「慎重論」が多数を占めた。
 県によると、手術を受けた可能性のある人を含め、当時の住所が県保有資料から明らかなのは183人。一時金支給の促進を目指す県は6月11日、全35市町村の担当者を集めた説明会で、183人の生存状況と現況の情報提供を求めた。
 手術を受けた事実は本人の身内も知らないケースがあり、個別説明の際にはプライバシーへの配慮が欠かせない。同居家族や福祉サービスの利用状況など、事細かな情報の提供を県が求めたのはそのためだった。
 山形市によると、6月にあった説明会の席上、対象者への個別説明の方法や集まった情報の取り扱いについて、県から具体的な言及はなかった。
 7日の審議会では、これらの点を明示するよう県に要求することが決まり、県への情報提供の可否は保留とされた。
 県が受けた一時金に関する相談は、7月末時点で27件。そのうち13件が申請に至り、60代男性の1件について支給が認められたが、旧厚生省の統計では、県内で445人が強制手術を受けたとされ、救済は広がりを欠いているのが実情だ。

◎国は広報のみ

 一時金制度の周知に関して国が一般的な広報のみを規定する中、県が独自に個別説明の方針に踏み切ったのは、対象者が高齢や障害のため広報に接する機会が限られるほか、そもそも手術を受けた事実を知らされていないケースもあり得るからだった。
 7月末時点で支給対象者の情報提供があったのは17市町村の80人分。旧法を巡る国家賠償請求訴訟で仙台弁護団長を務める新里宏二弁護士は「100人を超える規模で被害者が特定されている山形で一時金の個別説明を行う意義は非常に大きい。県にはプライバシーを守るための必要な情報収集だと丁寧に説明する姿勢が求められる」と話した。

[救済一時金]旧優生保護法下の強制不妊手術問題の救済法(4月24日成立、即日施行)に基づき、不妊手術の被害者に一律320万円が支給される。都道府県が申請の受付窓口となり、国が認定する。支給対象者に個別に申請手続きを伝えるため、山形県は県内市町村に、対象者の現住所や福祉サービスの利用状況といった情報を提供するよう求めている。7月末現在、全国で400件余りの申請があり、うち57件の支給が決まった。申請の期限は法施行から5年。


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2019年08月15日木曜日


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