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詩人・吉増剛造さん、石巻・鮎川にRAF期間中滞在 来訪者と交流「魂の復元手助け」

作品の前で詩人の家への思いを語る吉増さん=石巻市鮎川浜

 先鋭的な作風で知られる現代詩の第一人者、吉増剛造さん(80)が石巻市鮎川浜に2カ月間滞在し、来訪者と交流しながら詩を制作する活動を始めた。東日本大震災からの再生を目指し、9月29日まで市内で開かれている総合芸術祭「リボーンアート・フェスティバル(RAF)2019」の一環。「来訪者こそが家を作り上げる人」と位置付け、自らは守り役「詩守(しもり)」として来訪者に創作の場を提供し、魂の復元を手助けしたいとしている。
 美術系の参加者が多いRAFの中で詩人は異色の存在。吉増さんは鮎川の廃屋だった元雑貨店を再生し「詩人の家」と命名。日中はほぼ毎日滞在し、来訪者と語り合い、創作も行う。
 店内には直筆の近作が張られる。吉増さんを高く評価した詩人・評論家吉本隆明氏の詩集「日時計篇」を死後、「鎮魂」を祈り極小文字で書き写している作品群。震災を主題にした詩群「怪物君」に連なる。「震災後の(詩作の)苦闘の最先端がここ」と言う。
 金華山を望みながら朗読した映像や、屋外で持ち歩き、たがねで打刻された銅板の詩もある。ニーチェ、宮沢賢治、宇宙論…。500冊超の蔵書も展示され吉増さんの思想を物語る。
 欧州では詩人を招き、交流する「ポエツハウス」の文化があり、吉増さんも体験した。80歳になった今、人々と魂の交歓をしながらの制作、表現活動を「最後の夢」とさえ言う。
 「大学の卒論は松尾芭蕉。俳諧でもこういう文化があった。自分は番人となって旅人を歓待する。来訪者には自由にいい時間を過ごしてもらい、次の人生に向けて歩んでもらえれば」
 近くのホテルでは期間中に創作した詩を窓ガラスに書く公開制作も実施。一定期間は詩人の家近くの貸家に泊まり、来訪者(有料、予約制)と過ごす。朗読ライブなども随時予定。定期的にミニコミ紙も発行する。
 吉増さんは震災前からむつ市の恐山や陸前高田市、南相馬市など東北を巡り、湧き出る感情と向き合ってきた。「目の前の金華山(黄金山神社)は東北三大霊場であり、クジラもやってくる。『大災厄』に遭ったこの地で心の中に何が湧いてくるか。小さな人体実験になる」と語った。
 連絡先は詩人の家担当090(9429)0203。

[よします・ごうぞう]1939年東京生まれ。慶大卒。詩集「黄金詩篇」で第1回高見順賞、「『雪の島』あるいは『エミリーの幽霊』」で芸術選奨文部大臣賞、2013年文化功労者、15年日本芸術院賞。16年に東京国立近代美術館で企画展「声ノマ 全身詩人、吉増剛造展」、詩集「怪物君」を発刊。朗読パフォーマンスの先駆者としても知られる。自宅は東京。


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2019年08月17日土曜日


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