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<福島第1原発事故>個人・地域の文化財を救え 帰還困難区域で住宅解体進み、自治体急ぐ

福島県双葉町上羽鳥地区で搬出する仏像の放射線量を測定する町教委職員=7月下旬

 東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域を抱える福島県の自治体が、個人や地域が所蔵する文化財や歴史資料の救出活動を続けている。同区域でも住宅解体が進み、地域の営みや記憶を伝える資料が消失する恐れがあるためだ。盗難被害が懸念され、住民も自治体に預けるなど保全を急ぐ。

 全町避難が続く双葉町の上羽鳥地区で7月下旬、観音堂と不動堂に安置されていた古い仏像計4体を町教委が救出した。県や福島大が協力。放射線量が一定以下であることを確認し、町内の保管場所に移した。住民が救出を依頼した。
 周辺は、帰還困難区域に再び住めるようにする特定復興再生拠点区域(復興拠点)。町は2022年春までの避難指示解除を目指しており、来春を目標に通行証なしで立ち入りできるようにする規制緩和も予定する。実現すれば、人の往来が増える。
 二つのお堂の前はかつて盆踊りや花見が行われた地区の中心。地区長の今村樹重(たてしげ)さん(69)は「仏像は盗難の恐れがあり、地震で傾いたお堂もすぐには直せない。将来、住民が帰還するまで町に守ってもらう」と話した。
 町は18年、個人宅や地域に眠る資料の救出を本格化した。同年には復興拠点整備のため、希望する世帯の解体除染が始まった。帰還困難区域が96%を占める町内はそれまで大半の住宅は手付かずで「その分貴重な物が残っている」と町教委はみる。
 寄贈されたり預かったりした文書や農具、生活用具、刀剣類などは約20件計約850点に上る。写真が多く、1960年代の珍しい空撮写真群もあった。
 避難指示を一部解除した自治体は、以前から帰還困難区域を含め救出活動を展開中。17年春に同区域を除き解除された富岡町は14年から約3万点を救出し、浪江町も1000点以上を受け入れた。
 今年4月まで全町避難が続いた大熊町は17年3月に作業を始め、約400点を救出。旧家の食器や特産品紹介の展示物など暮らしを物語る一部は17、18年の町文化祭で展示した。町教委は「古里を思い出してもらい、帰還の呼び水になるといい」と説明する。
 双葉町教委は「避難を続ける町民に、文化財は地域共有の財産との意識が高まっている。文化財は町民が町とつながるきっかけになり得る」と強調。気になる資料があったら気軽に相談するよう呼び掛ける。


2019年08月19日月曜日


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