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<仙台市議選>復興の訴えに候補者迷いも 津波被害の宮城野・若林両区、被災者ニーズ複雑化で

震災遺構の住宅基礎群を見つめる候補者=仙台市若林区荒浜

 25日投開票の仙台市議選は東日本大震災後、3度目の審判となる。市沿岸部の復興はハード整備が完了に近づくが、被災者の生活再建や心の回復は今も課題が山積する。「ポスト復興」を巡る論戦が白熱する中、津波被災地がある宮城野、若林両区で「復興」はどう語られているのか。候補者を追った。(報道部・上村千春、石川遥一朗)

「希望」を語る

 選挙戦最初の週末となった17日夕、若林区荒浜の貞山堀で、震災の犠牲者を悼む灯籠流しがあった。水面( みなも )に浮かんだ約200個の明かり。手を合わせる人々の中に若林区の候補者たちの姿もあった。
 震災から約8年5カ月。市中心部は復興後のプロジェクトに沸くが、被災地は時が止まったままだ。「故人や先祖をしのぶ場で大声を出すのは無粋でしょ」。自民党現職はそう言い残し、静かに会場を後にした。
 無所属新人は17日朝、深沼海岸の慰霊塔に祈りをささげた。選挙カーで沿岸部を回り「8年5カ月が過ぎても本当の復興がなされていない」と声をからした。
 再建された家屋が点在する宮城野区の南蒲生地区。18日に個人演説会を開いた共産党現職は、被災者が暮らす災害公営住宅で、収入超過世帯の家賃が引き上げられた問題に触れた。
 「町内会活動に熱心だった人が転居し、コミュニティー崩壊が心配される」。現職は市の対応を批判し、家賃の軽減策を提案した。
 被災地の「希望」を語る候補者もいる。
 若林区の別の自民現職は19日、津波が押し寄せた二木地区の演説会で、10月19日に全線開通する「東部復興道路」を取り上げた。
 「県道をかさ上げした道路で、海岸堤防との多重防御で津波から命を守る。この一帯に安らぎとにぎわいのゾーンが生まれる」
 二木地区を地盤とする社民党現職も20日、隣接地区の津波避難ビルで演説し「地域を一番知る私が元気な街をつくる」と誓った。

演説で触れず

 時の経過とともに被災者のニーズは複雑化する。演説で復興を話題にするかどうか、候補者には迷いもある。
 防災集団移転先となった若林区の新興住宅地「なないろの里」。20日午後、商業施設前でマイクを握ったある候補は「皆さまのために働く」と訴えたが「復興」は口にしなかった。
 投票日が迫り、有権者は選択の結論を出しつつある。荒浜出身の女性(75)は「4年前の市議選に比べ復興の話題が減った。被災者の声を聞いてくれる候補者は誰か。しっかり見極めなければいけない」と考えを巡らせる。


2019年08月23日金曜日


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