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移動図書館 心を復興 石巻市「ひより号」常連ら別れ惜しむ

小説や児童書、手芸本などを積んで被災地を巡ったひより号。常連の利用者からは終了を惜しむ声が聞かれた=23日、宮城県石巻市雄勝町

 東日本大震災の被災地を回り続けた石巻市立図書館の移動図書館車「ひより号」の最後の巡回場所は、東日本大震災の津波で被災した同市雄勝町大須地区だった。運行開始から約8年。常連の利用者は心の復興を支えてくれたひより号との別れを惜しみ、職員に感謝を伝えた。

 23日午前11時すぎ、同地区の車庫跡地に約3000冊を積み込んだひより号が到着した。「来月から会えなくなるのね」。車内の貸し出しカウンターで利用者が職員に声を掛けた。
 常連の一人、無職江田愛子さん(83)は「本が借りられ、友達と会える場でもあった」と惜しみ、「震災で多くを失い、本を頼った人はたくさんいたと思う。復興に向けて大きな力になった」と話した。
 ひより号は1972年に活動を始め、2004年に休止。震災後の11年10月、被災者の心のケアの一環として仮設住宅団地を回り始めた。震災後の利用者は延べ約1万9600人で、約9万7800冊を貸し出した。
 住宅復興の進展とともに利用者は減少した。14年度の延べ3819人をピークに18年度は延べ764人になった。50カ所以上あった巡回先は本年度、8カ所だった。
 震災で家族や仕事を失った人。知り合いの少ない仮設住宅で苦労する人。被災者にとって、本と職員との談笑は暮らしを潤した。
 「図書館が被災者のためにできることをしたい」。職員らは努力を惜しまなかった。巡回ルートに応じ積み込む本を入れ替え、歴史好きの利用者がいるからと時代小説を多めにそろえることもあった。
 約7年半にわたってひより号に乗った市図書館の臨時職員飯坂隆さん(61)は「大きな仮設住宅団地では行列ができた。退去する時に『今までありがとう』と涙ながらに伝えてくれた人もいた」と懐かしみ「別れは少し寂しい」と話した。
 ひより号は今後、市内各地の図書館分館に本を運ぶ役割を担う。


2019年08月24日土曜日


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