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閉館旅館のお宝に光 福島・「藤金」保管の50点、地元で展示 竹久夢二の作品も

夢二の作品「黒子」をしみじみと眺める遠藤さん

 昨年末に約150年の歴史に幕を下ろした福島市の老舗旅館「藤金(ふじきん)」が保管していた品々を紹介する「藤金旅館展」が、同市本町のウィズ・もとまちで開かれている。大正ロマンを代表する画家の竹久夢二が、旅館のために描いた作品もある。9月2日まで。
 展示されているのは絵画や書、明治期の市中心部の地図など約50点。夢二の作品「黒子」は2代目おかみに向けて描いた。夫を亡くし1人で切り盛りするおかみを励ます絵で、「何回でも生き返る」という意味が込められているという。
 戦時歌謡「露営の歌」の作詞者薮内喜一郎が「勝って来るぞと勇ましく」の歌詞を揮毫(きごう)した書や、明治天皇の東北巡幸に同行した元勲木戸孝允が宿泊した縁で贈られたという書「守道有天知(道を守らば、天知る有り)」もある。
 藤金は1868(明治元)年に創業した。屋号は創業者遠藤金治に由来し、数多くの歌人や画家、政治家らが投宿。昭和初期に首相を務めた田中義一も宿泊し、「満而不溢(満ちてあふれず)」の書を残した。
 建物は増改築を重ねながらも瓦ぶき屋根、白壁などが明治のたたずまいを残した。近年はセールスマンの利用が多くなり、素泊まりで1泊約5000円の手頃な料金設定が人気を集めた。東日本大震災後は復興作業員らの定宿にもなった。
 4代目遠藤民一さん(72)夫妻に後継者がおらず、高齢だったことも重なり昨年12月28日に閉館。「年寄り夫婦では、満足なサービスが提供できないと判断した。閉館すると告げた時、常連客から『これからどこに泊まればいいんだ』と言われたのはつらかったね」と遠藤さんは振り返る。
 閉館後、所蔵品約550点を市に寄託した。貴重な資料が多いことに着目した市の発案で、展示会が決まった。建物は今年4月上旬までに取り壊されている。
 遠藤さんは「旅館を守るのに精いっぱいだったが、今は一つ一つの品がいい思い出。埋もれた資料に価値を見いだしてくれた市に感謝したい」とつぶやいた。


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2019年08月27日火曜日


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