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<われら常連ライダー>民泊でつながる人の縁

民泊先での再会を楽しみにしながら練習に励む岩館さん=東京都文京区

◎(中)東京・文京区岩館徹さん(39)

■思い出す笑顔

 9月が近づくと、石巻で待つ夫婦の笑顔を思い出しながら、あれこれ考える。
 「今年はどのお酒をお土産に持って行こうかな」
 ツール・ド・東北に2013年の初回からエントリーし続ける東京都文京区の会社員岩館徹さん(39)は、一般家庭に宿泊する「民泊」を楽しみにしている。定宿は石巻市日和が丘で地区の主任児童委員を務める宝鉄雄さん(67)方だ。
 「現地の人と知り合いになるのは楽しそう。いろいろ話を聞いてみたい」。第2回大会の14年、神奈川県出身の岩館さんは民泊の申し込みを思い立った。
 宝さんの自宅は高台にあり、東日本大震災の津波は免れたが、市全域は壊滅的な被害を受けた。「生の声を聞くのと、本や新聞で読んだり、テレビで見たりするのは全然違う」。夫婦から被災の様子を教えてもらい、傷ついた沿岸を自転車で走ると実感が湧いた。
 仲間と酒盛り
 出場を繰り返すと、被災地の変化を肌で感じるようになった。「今年は景色がちょっと変わったね」「道路がきれいになった」。民泊で訪れた別のライダーとこんな言葉を交わした。
 毎回宝さんの家に泊まるのは常連を含むライダー8人ほど。「1年に1度、みんなと会って飲み、そして走る。恒例行事になっている」と岩館さんは笑う。
 宿を共にするライダーは会社員もいれば公務員もいる。住まいも東京都や愛知県などさまざまだ。普段はフェイスブックなどの会員制交流サイト(SNS)で連絡を取り合う仲だけに、大会前夜は宝さんを囲んで日本酒や焼酎を酌み交わし、近況報告や自転車の話で盛り上がる。
 インターネット関連の仕事に携わる岩館さんは「知り合った人がたまたま近い業界にいたら、一緒に仕事ができるかもしれない」とつながりを期待する。

■支え合う関係

 宝さん夫婦にとってもライダーとの交流は何よりの楽しみだ。息子たちが独立して空いた部屋を提供していて、妻の鈴子さん(64)は「毎年、子どもが里帰りしたみたい」と9月を待ち遠しく感じる。
 「被災地への復興支援の恩返しとして大会をお手伝いしたい」。そんな理由で民泊に手を挙げた宝さんだったが、今やライダーとお互いに支え合う関係だ。
 鈴子さんは自宅で放課後子どもクラブのNPOを主宰する。生活が苦しい家庭からも通えるようクラウドファンディングで出資を募ったところ、岩館さんらがSNSで支援を呼び掛けてくれたこともあり、目標を達成できた。
 「大会をきっかけに参加者が宮城を訪れ、人の縁が生まれる。そこからさらに別の輪が広がるのが魅力」。常連の岩館さんならではの実感だ。
 今回は170キロの南三陸フォンドへの出場を予定する。変わりゆく被災地の景色を確かめるのはもちろん、人との出会いを心待ちにする。


2019年08月28日水曜日


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