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<せんだい進行形>女性、創業に挑む 宮城の融資件数3割増 官民の支援後押し

「介護脱毛」できるサロン/脱毛の施術で使うジェルを確かめる千夏さん(左)と千秋さん
カフェで癒やしを提供/四季を感じられる店内で働く村山さん

 女性による創業が仙台圏で活発になっている。日本政策金融公庫(日本公庫)によると2018年度、宮城県内の女性への創業融資件数は前年度に比べ3割増えた。時代の変化を敏感に捉え、思いを実現しようとする女性の挑戦は社会に新たな風を吹き込む。官民の充実したサポートも功を奏していると言えそうだ。(報道部・高橋一樹)

■客層は40〜50代

 宮城県利府町の浅井千夏さん(42)は妹の阿部千秋さん(38)と共に9月20日、脱毛兼ネイルサロン「C.color(シーカラー)」を仙台市宮城野区高砂に開業する。将来受ける介護に備えて脱毛する「介護脱毛」を前面に出し、40〜50代の中高年層をターゲットにするという。
 千夏さんは看護師、千秋さんは介護士。陰部の毛が擦れてかぶれたり、便が付着して炎症を起こしたりして苦労する高齢者と多く接してきた。「長寿の時代にニーズは大きい」と考えた千夏さんが昨年、ネイリストでもある千秋さんに声を掛けた。
 皮膚を傷つけにくい光を当てる脱毛の機器を用意し、男女とも気軽に入ってもらえるよう白を基調とした内装を構想中。千夏さんは「丁寧にカウンセリングをして一人一人に合ったメニューを提供したい」と意気込む。

■自己実現目指す

 日本公庫の調査では、宮城での女性への創業融資件数は18年度133件で、多くが仙台圏。前年度比で30.4%増え、創業全体の伸びをけん引した。18年度に限れば全国は0.9%減の6116件で、宮城の伸びは際立っている。
 業種別では美容業を含むサービス業や、飲食業、整体などの医療業が多い。日本公庫仙台支店の担当者は「女性向け相談窓口の開設や創業セミナーなど、支援が充実してきたことが要因ではないか」と話す。
 日本公庫に加え、仙台圏で女性の創業支援の中核的な役割を担うのが、14年に開設された仙台市起業支援センター「アシ☆スタ」(青葉区)だ。
 女性の中小企業診断士が当初から所属し、先輩起業家らで構成する助言役のメンター12人のうち7人が女性だ。女性向けセミナーや起業家同士の交流イベントを定期的に開催。交流サロンには託児所も設ける。
 こうした手厚いサポートもあり、18年度の創業支援95件のうち、48件を女性が占めた。本年度も相談件数は増加基調だという。
 新井涼太起業支援課長は女性の創業について「出産や子どもの成長など、自身のライフステージを見据えながら探る傾向が大きい。動機も生きるための手段というより『自己実現』『人の役に立ちたい』と多様だ」と分析する。

■震災きっかけに

 東日本大震災は、多くの女性が創業に踏み出すきっかけにもなった。
 仙台市の村山理恵子さん(39)は昨年11月、青葉区大町のビル2階に「カフェえにしえ」を開いた。イチョウ並木が映える窓が自慢で、「四季を楽しむ時間」を提供するコンセプトだ。
 震災時は市内で全国チェーンのカフェに勤務。1カ月後の再開に、客から「やっといつも通りの時間を過ごせた」と感謝され、カフェを通じて日常にほっとできる一こまを提供したいとの思いを強くしたという。
 2年前から職業訓練所やアシ☆スタに通い、開業準備を進めた。看板メニューのパスタには、地元産の野菜をたっぷり。不定期でアーティストの個展もある。「地元の人やモノをつなぐ、地域に密着したお店にしていきたい」。村山さんの思いと個性が光る空間になりつつある。

◎社長の割合 依然低水準帝国データ調査

 女性による創業が徐々に活発になる一方、経営者全体に占める女性社長の割合は依然、低水準だ。
 帝国データバンク仙台支店がまとめた調査によると、東北で女性が社長を務める企業の割合(2019年4月末)は表の通り。宮城は前年とほぼ同じ7.8%で全国28位。全国(7.9%)や東北(8.0%)も下回っている。
 東北の女性社長の就任経緯は、同族承継が61.7%で突出し、男性社長の42.2%に比べて割合が高い。創業は男性38.9%に対し、女性は26.3%にとどまる。過去1年間(18年5月〜19年4月)の新任社長に限っても、女性社長における創業者の割合は32.1%で男性(61.8%)の半分だった。
 仙台支店は「先代の高齢化や後継者難などで女性が事業を引き継ぐ受動的なケースが多い。企業の活性化や多様化の観点からも、起業意欲が旺盛な女性に対する積極的な支援が必要だ」と指摘している。


2019年08月30日金曜日


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