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<岩手県知事選 現場からの報告>被災した県内108漁港、全て復旧したが・・・ 漁業者3割減、高齢化で担い手確保急務

復旧したものの、出漁する漁船が減った合足漁港=大船渡市

 東日本大震災で被災した岩手県大船渡市三陸町の千歳(せんざい)漁港の復旧工事が8月20日で完了し、これにより岩手県内の全108漁港が震災前の姿を取り戻した。震災後、いち早く原状回復方針を打ち出して漁村の生活基盤を維持した県だが、肝心の漁業者は3割も減少している。担い手確保が急務だ。

 2015年に復旧した大船渡市赤崎町の合足(あったり)漁港。今夏、係留された小型漁船約10隻のうちウニ漁に出たのは4隻にとどまった。震災後に再起したものの、高齢で出漁を見送ったり船の使用者が亡くなったりしたためだ。
 かつての合足集落は、ほとんどの世帯がワカメ養殖を手掛けていた。古内章男さん(70)は「船揚げ場が狭く感じられたものだった」と振り返る。
 だが、漁業世帯の多くが高齢化と後継者難に直面。ワカメ養殖に従事する世帯は震災前から減り続け、震災を経てついに廃れてしまった。
 震災復興で岩手は、市町村管理77漁港と県管理31漁港の復旧を進めた。規模の小さな合足漁港でも約1億1000万円を投じるなど工事費は計1437億円を超える。漁港の復旧で選択と集中を模索した宮城とは対照的な対応だ。
 達増拓也知事は「養殖などを中心とする岩手の漁業は、漁師が浜前の水産物をその場で水揚げする形態が主力。それぞれの漁港を存続させようという考え方は、岩手が方針を決めて国の同意を得た」と説明する。
 ウニやアワビの漁を続ける古内さんは「仮に他の場所に漁港が集約されていたら、不便になってやめていたかもしれない」と県の方針に評価しつつ「あと何年続けられるだろうか」と浜の将来に不安を抱く。
 漁業センサスに基づいて震災前の08年と震災後の18年を比較すると、岩手は漁船で35.4%(全国28.5%)、漁業就業者で36.4%(31.5%)の減少。全国の減少率を上回る。
 漁村経済に詳しい北海学園大(札幌市)の浜田武士教授(地域経済論)は「ハードを整備した以上、税金を支払える産業に育てていくのが被災地の使命。県は新たな担い手確保策や養殖漁業を強力に進める必要がある」と指摘する。
 同時に、漁業者減や不漁で水揚げ量が少なくなる中にあっても、県内13魚市場がそれぞれ有する役割や機能が震災前と変わらない現状を「集荷力が分散され、結果として漁業者の手取りも減ってしまう」と憂慮。市場の取引機能の集約など県に調整力の発揮を期待した。(大船渡支局・坂井直人)


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2019年09月01日日曜日


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