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<岩手知事選>学術都市建設、新産業創出… 地域活性化「ILC頼み」 実現へ不透明感も

ILC誘致の地域波及効果などを解説したセミナー=8月30日、二戸市

 北上山地への超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致を目指す岩手県。東日本大震災で疲弊した地域経済にとって起死回生の一手とPRするが、巨大プロジェクト依存型の活性化策には不透明感も漂う。

■世界から研究者

 「誘致が実現すれば、少子高齢化・人口減少社会にふさわしいまちづくりができる」
 県は8月30日、岩手県二戸市に地元企業の関係者らを集めてILCセミナーを開催。高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)の吉岡正和名誉教授は、日本社会が抱える諸問題と結び付けて誘致の有用性を説いた。
 波及効果は技術開発や新産業創出にとどまらないと吉岡氏は力説する。
 世界中から移住する研究者とその家族に対応するため、医療、商業、スポーツ施設などが集積した学術研究都市を建設。最先端の人工知能(AI)を活用して「研究者と地域住民が混在し、高齢者も住みよい快適なまちになる」。
 県は2019年度に日本学術会議がILC建設を重点大型研究計画に盛り込み、20年に政府が誘致表明−との想定で「セミナーや説明会を繰り返し開催し、県民の理解を求める」(ILC推進局)としている。
 7月に策定した「ILCによる地域振興ビジョン」も「ILCの排熱活用」「関連施設への県産木材の利用」「教育水準の向上」で「国際的な研究拠点」「活気あふれる地域」を岩手に実現するとうたった。
 ただ、誘致の先行きは不透明だ。一点突破で全面展開を図るような地域振興には懐疑的な声もある。

■決定手順が複雑

 一関市は8月、18年度に閉鎖したNEC生産子会社の跡地を購入し、ILC関連施設を整備する案を示した。しかし、議会からは「ILCありきで進めて本当に大丈夫なのか」「先走り過ぎではないか」と慎重な意見が相次いだ。
 関係各国の政府や海外の研究機関が絡むILCは立地決定までの手順が複雑だ。岩手県立大の斎藤俊明特任教授(公共政策論)は「岩手や東北の発展にどれだけ寄与するのか、なおイメージがつかみにくい」と指摘する。
 ILC建設費は最大で約8000億円、運営経費は年間400億円程度とされ、関係各国が分担を協議する。地域振興ビジョンを実施するにも財源は必要だが、県ILC推進局は「現時点で額は示せない」。
 斎藤特任教授は「絵に描いた餅にならないよう、財政的に余裕があるのかどうかを示す必要もあるだろう」と助言する。
(盛岡総局・片桐大介)

[国際リニアコライダー(ILC)] 地下約100メートルに設置する全長20キロの直線形加速器。光速に近い速度で電子と陽電子を衝突させ、宇宙誕生直後の状態を再現する。衝突で生じる素粒子「ヒッグス粒子」の精密測定で宇宙の成り立ちや素粒子物理学の新理論を探究する。国際研究者組織が2030年代の稼働を目指す。


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2019年09月04日水曜日


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