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<岩手知事選 現場からの報告>災害公営住宅で進む高齢化 共助の担い手支援課題

情報共有会で意見交換する県営栃ケ沢アパートの自治会役員ら=8月30日

 岩手県では東日本大震災の復興事業により、17市町村に計5833戸の災害公営住宅の整備が間もなく完了する。うち3割の1760戸を占めるのが県営住宅だ。入居者の高齢化が進む中、コミュニティーの形成と維持が課題になっている。
 陸前高田市にある県営栃ケ沢アパートは県内最大規模の301戸。2016年8月に入居が始まり、現在の入居世帯は約230を数える。
 自治会長の紺野和人さん(67)は2日、毎朝のラジオ体操を終えた足で、膝を手術したばかりの女性(85)方を訪ねた。
 女性は1人暮らし。隣室に住む妹も体調を崩し、今は高齢者施設に入所している。「アパートは75歳以上の高齢者が2割近くを占める。体操やサークルへの参加者は減っている」と紺野さんは気をもむ。
 災害公営住宅を全て市町村営とした宮城に対し、岩手は県の関与を高めて整備に臨んだ。
 県のマンパワーを投入して整備の迅速化を図ると同時に、財政力の弱い市町村にのし掛かる維持管理費の軽減を図る。震災を機に内陸部へ移住する避難者も多く、広域で着工戸数を調整する必要もあった。
 一方で、震災後に指定された災害危険区域を避けて土地を確保しつつ、整備を急がなければならない。結果、沿岸部の県営は全て集合住宅になった。
 市内外各地の被災者が入居する栃ケ沢アパートは、住民同士の顔合わせに始まり、数カ月を要した話し合いの末、自治会を設立した。自治会役員や市社会福祉協議会の生活支援相談員らが集まって毎月1回、情報共有会を開いている。
 直近の情報共有会で話題になったのは安心キットの全戸配布についてだった。容器内にかかりつけ医、緊急時の連絡先などを記し、各世帯で保管してもらう。
 入居者の救急搬送が相次いだのをきっかけに、市社協に相談して購入を決めた。紺野さんは「今後ますます被災者支援の団体や行政との連携が重要になる」と痛感する。
 仮設住宅や災害公営住宅で被災者の見守り活動を続ける生活支援相談員事業には、県が補助金を出している。ただ、国の復興・創生期間は20年度末で終了。以降の財源確保は見通せない。
 阪神大震災を経験した兵庫県は復興基金を活用し、高齢者の見守りやコミュニティー形成の手助けをする支援員を災害公営住宅に常駐させている。17年度まで年間2億円以上の経費は全額県が負担した。
 災害公営住宅の自治会支援を続ける岩手大三陸復興・地域創生推進機構の船戸義和特任助教は「入居者の共助の力を高めるため、担い手の育成が求められている。どう支援していくのかを県が指し示す必要がある」と指摘する。(大船渡支局・坂井直人)

◎「現場からの報告」は今回で終わります。


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2019年09月05日木曜日


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