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石巻の先駆者・井上吉兵衛の功績を紹介 子孫の三河さん、歴史物語を刊行

「奥州石巻湊三河屋」を企画した三河さん

 江戸時代、石巻地方で大規模な植林やかつての特産「釜梨」栽培など公益事業に取り組んだ井上吉兵衛(きちべえ)の功績とその系譜をたどる歴史物語「奥州石巻湊三河屋〜江戸『三河屋』ものがたり」を、吉兵衛の末裔(まつえい)で石巻市の会社社長三河鴻一さん(83)が刊行した。

 吉兵衛は1804(文化元)年、現在の栃木県矢板市の豪農に生まれた。29歳になる1833(天保4)年、石巻の中心部に材木商「三河屋」を開業。船5隻を有する廻船問屋、地酒「墨廼江」の源流となる酒造業へと事業を拡大する。
 15万7600本の植林事業を手掛け、仙台藩の財政に貢献したほか、荒れ地だった現在の大街道一帯を開墾。当時困難とされた朝鮮ニンジン栽培に成功した。ナシの産地化にも挑み、「釜梨」は現在の特産地の利府町や美里町にも広がった。
 物語は吉兵衛の「公益のために」「土に生きる」という意思に基づく生き方を紹介する。戊辰戦争で石巻が戦場になる寸前だった史実や、吉兵衛の養子で後継ぎとなる随平が箱館戦争に参戦したことも記された。
 吉兵衛夫婦の会話を通し、当時の石巻の繁華街や街並み、立ち並ぶ店舗の様子が詳細につづられ、郷土史としても読み応えがある。
 吉兵衛の妻ますの実家に当たる三河家の姓を引き継ぐため、石巻三河家を再興させた経緯を紹介。現代に続く井上家と三河家の系譜を丁寧にたどった。
 三河さんは両家のルーツを探る構想を40代の頃から温めてきた。井上家に残る古文書や東京の博物館、愛知県の図書館などを訪ね、資料を集めてきた。今回、石巻市の地域ライター今村正誼さんに資料を託し、調査、執筆を依頼した。
 三河さんは「石巻の歴史的な動きも盛り込まれ、読みやすくなっている。家族の歴史は知っているようで知らない。40年来の悲願が実現した」と話した。
 冊子は500部作成。非売品。石巻市図書館で閲覧できる。


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2019年09月07日土曜日


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