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和牛のDNA不一致問題 宮城県が9月中旬にも獣医師を刑事告発へ

緊急検査で交配内容を記録した台帳を調べる宮城県職員=8月1日、宮城県栗原市

 宮城県石巻市の男性獣医師が人工交配した宮城県産和牛のDNAが父牛と一致しなかった問題で、県は6日、家畜改良増殖法違反の疑いで今月中旬にも獣医師を刑事告発する意向を示した。佐藤夏人県農政部長は「捜査機関と協議中だが、厳しく対処しなければならない」などと述べた。
 獣医師によって生産され、存命中の258頭のDNA検査結果が同日、出そろい、不一致なのは計30頭と判明した。検査は全農県本部が実施していた。検査終了を受けて佐藤部長が報道各社の取材に応じ「1割超の不一致の割合を見れば故意と思われても仕方ない」との見方を示した。
 県によると、同法に基づいて5月に実施した立ち入り検査で、獣医師は「不注意や勘違いで取り違えて授精証明書を発行してしまった」と説明。人工交配した種雄牛と繁殖用雌牛の名前や実施日時を記録した台帳の記載事項には多くの不備が見つかっている。
 家畜改良増殖法は人工授精業務の適正実施を定め、違反すると20万円以下の罰金などが科される。

◎不適切業務10年以上見抜けず チェックの限界露呈

 石巻市の男性獣医師によって人工交配され、存命する牛258頭のDNA検査が終わった。父牛とDNAが異なっていたのは計30頭。うち16頭の雌牛が繁殖用となり、遺伝子不一致の影響は計52頭の子、孫、ひ孫の世代に広がった。獣医師の不適切な業務は少なくとも10年以上、宮城県の検査をくぐり抜けており、チェック機能の限界が露呈した。
 県は毎年1月、家畜改良増殖法に基づき県内の家畜人工授精師に対し、人工交配した種雄牛と繁殖雌牛の名前や実施日時などを記録した台帳の提示を求め、検査している。
 検査は同法の定める通り、適切に内容が記載されているか、精液の入っていたストローや授精証明書が管理されているかの確認にとどまる。獣医師のケースは見過ごされてきた。
 県農政部の佐藤夏人部長は取材に対し「今回のように、使った精液そのものが違っていた場合、見抜くのは難しい」と検査の限界を認めた。
 県内の生産農家は「人工交配は授精師と依頼した農家の信頼関係で成り立っている」と指摘する。人工交配する際、農家が立ち会わない場合もあるという。
 授精師がその都度証明書を発行するのではなく、受胎確認や出産の後に出すケースも。「人工授精が成功するかどうかは半々」(県内の授精師)のためで、獣医師も同様だった。
 県はこうした状況が問題の一因にもなったとみて、農家も立ち会って交配を確認することや、証明書を交配の際に発行することを求める要領を近く策定し、再発防止を図る考えだ。
 血統書には父牛として人気の高い「安福久」や「百合茂」が記載されていたが、実際は別の牛だったことがDNA検査で判明。安福久の精液は1本10万円以上で取引されることもあり、子牛の価格を左右する。
 一方で、世代が古い種雄牛の精液が使われた例も散見され、県内の授精師は「精液の在庫一掃の目的もあったのだろうか」と推測する。


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2019年09月07日土曜日


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