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<残照>「理想の大吟醸」一途に追求 杜氏 川名正直さん

2014年5月の全国新酒鑑評会で11年連続金賞に輝いた大吟醸を持つ川名さん(左)と由倫さん

◎川敬商店5代目社長・杜氏
川名正直{かわなまさなお}さん(70)
=宮城県美里町、8月11日死去=

 仕事に厳しく、口下手。自分を追い込むようにして酒造りに挑み続けた。
 妥協しない醸造は評価が高い。商品の一つ「黄金澤(こがねさわ)大吟醸」は、全国新酒鑑評会で全国最多となる16年連続金賞を更新し続ける。
 口癖は「大吟醸は別格の存在」だった。追い求めたのは「まろやかで奥深い味」。理想の「作品」実現に人生をささげた。
 長女由倫(ゆり)さん(31)は「特に仕込みがある冬場は、家族で朝食を食べる時間に、もう蔵にいる。夕食も蔵で済ませたこともあった」と振り返る。学校行事に参加したのも「高校の卒業式くらい」だった。
 1902年創業の酒蔵の長男に生まれた。20代半ばで家業に携わり、43歳で5代目社長に。40代後半で杜氏(とうじ)も務めるようになった。
 「スタッフに細かくシビアな仕事を求めた。もちろん、自分にも。蔵人としての覚悟を持っていた」と妻真紀子さん(64)は語る。気候が温暖な西日本の醸造方法を学ぶため、春先には関西や四国も訪問。一年を通して研さんを積んだ。
 作業中は口数が少なく、めったに笑顔も見せなかった。孤高の姿勢の一方、真紀子さんは「実は心配性だった」と言う。
 鑑評会の発表日が近づくと、いつもそわそわ。「今年は(金賞は)無理だ」と弱音を吐くこともあった。最高賞の報を受けると、ほっとした表情で「やっぱりうちの酒はうまいな」と祝い酒を楽しんだという。
 2012年秋に由倫さんが家業に加わると、他のスタッフに教えない醸造の極意も伝授した。
 大吟醸の仕込みを翌日に控えた18年1月、転倒して大けがを負った。懸命にリハビリを続けたが、現場復帰はかなわなかった。
 その年の鑑評会でも金賞を受賞すると、作業の中心を担った由倫さんに「大したもんだ」と一言。数少ない褒め言葉だった。
(山並太郎)


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2019年09月10日火曜日


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